ヘッドライト [DVD]
画質が鮮明なDVDです。ぜんたいに輪郭がくっきりしており、ぼやけたところが見られません。主役の長距離トラック運転手や女給仕が着るコートの光沢が、そして画面上のテーブルに置かれたワインボトルやグラスの質感が、鮮やかに伝わってきます。「ヘッドライト」は、アンリ・ヴェルヌイユ監督の最高作と評されることもあるほど有名な映画ですが、これまでDVD化されることがありませんでした。この作品がお好きな方にとっては、まさに待っていた甲斐があったと言えそうな、高品質のDVDだと思われます。
本作品は、ヌーベルバーグ以降のフランス映画に見られるようなカラッとした撮り方とは対照的な、湿気を含んだ暗さが印象に残る映画です。画面上の闇が、まるで奥に何か潜んでいそうなほど深く表現されており、怖さすら覚えるほどでした。トラックのヘッドライトが闇の中をこちらに向かってくる様子や、霧に立ち往生したトラックからヒロインが主人公の名を叫ぶ声がたいへん心に残ります。雨にぬれた夜の歩道が街頭の灯を反射して光る様子も、ジョセフ・コズマの手によるテーマ曲も印象的でした。
「とるに足らない人々について」という原題にふさわしい、切ない物語のフランス映画です。シネフィル(映画狂)受けのする監督の作品ではありませんが、ジャン・ギャバンがお好きな方だけでなく、陽性なハリウッド映画とは毛色の異なる古典的名画をご覧になってみたいという方にも、お薦めしたい作品です。
フレンチ・カンカン HDマスター [Blu-ray]
製品の発売前ではありますが、
発売元のIVCに製品仕様について問い合わせたので、
現在までに分かっている仕様の詳細を報告します。
『フレンチ・カンカン』は現在までに、
フランスのGaumont社とイギリスのBFIからブルーレイが発売されています。
この2枚はいずれもGaumont社が修復したHDマスターを使用しており、
レビューサイトや専門誌で高い評価を得ています。
今回発売される日本盤も、このGaumont社修復マスターを使用しているそうです。
しかしながら、先行する海外盤が本編映像を1080p(プログレッシブ方式)で収録しているのに対し、
今回の日本盤は1080i(インターレース方式)での収録となるそうです。
その理由について問い合わせたところ、
Gaumont社から支給されたマスターは1080pのものであり、
そのままでブルーレイ化することも可能であったものの、
プログレッシブ再生に対応していない機器でも不具合なく再生できるように
インターレース方式に変換して収録した、とのことでした。
一般的にインターレース方式はプログレッシブ方式に比べて
画質が低下する傾向があるため、
今回のオリジナルマスターからの収録方式の変更は残念です。
フィルムのキズなどの、マスター由来のノイズは十分除去されていると思われるため、
解像感の差異などはわずかに留まるとは思いますが、
やはりオリジナルの1080p画質で観たかった…という気持ちは拭えません。
(IVCさんには、今後のブルーレイのリリースでは1080pでの収録も検討していただくよう要望しました。)
音声はオリジナルのフランス語をリニアPCM(非圧縮記録)2.0chで収録。
(ちなみにフランス盤はDTS-HDMAモノラル、イギリス盤はリニアPCM 2.0ch)
特典は予告編(日本語字幕付)と
フランス文学者の野崎歓氏による解説リーフレットとなるそうです。
1080i収録には少々がっかりですが、
かつて東北新社から発売されていたDVDでは画質が物足りなかった『フレンチ・カンカン』を
非常に評判の良いマスターで観られるのは楽しみです。