事故発生から20年が経っても、未だ風化することなく日本人のこころに大きな傷跡を残した日航機墜落事故。それを新聞記者という立場で体験した著者が、ジャーナリストとして書くノンフィクションではなく、小説家として書いたのが本書です。
記者という体験から、もっと生々しい描写がたくさんあるのかと思えばさにあらず。トーンを抑えることにより、反対にリアリティが増しています。日本人のほとんどが未だに覚えている事故を小説にするわけですから、余計な煽りやセンセーショナルな表現は不要だと言うことでしょう。そしてその判断は間違いなく正しかったと本書を読み終わった時に感じました。
映画より原作を!おすすめ度
★★★★★
著者の横山秀夫は当時地元群馬の新聞記者だったそうです。
第一線で働いていたからこそ書ける当時の新聞社の様子。
元新聞記者の方に「読むと新聞記者になりたくなるよ」
と、勧められ読みました。
題材は、航空機事故だが、実際は人間ドラマです。
人々のエゴ、欺瞞、過去、暗い部分。
信念、感受性、情熱という力。
登場人物の思い思いが複雑に絡み合って、
汚い部分を見せながらも、各人の信念があり、
まっすぐとはいかなくても突き進んでいく姿に、
どんどんこの世界に引き込まれていきます。
納得理解のできないそんな気持ちの動きも多くありますが、
徐々に不器用な男「悠木」の男気に憧れが強まります。
大事な大事な伏線がばっさばっさとカットされた映画より
原作をよむことを強く強くお勧めします。
面白かったです、とっても。おすすめ度
★★★★★
劇場の予告を見て、原作を読んでみました。
内容については、今更書いても仕方ないでしょう。
主人公の葛藤、ドラマの盛り上がりとその直後に来る
落胆、放心。最後の纏め方も含めて、良い演出です。
あまりのおもしろさに、映画を見に行くのをやめました。
これだけの内容を凝縮するには、きっと尺が足らないと
思いましたので。
面白いと言えない
おすすめ度 ★★★★★
簡単にそんな言葉を使えない。人物や内容にノンフィクションの部分もフィクションの部分もあるけれど、新聞記者や新聞社の新聞が創刊されるまでの流れは、実際に現場で取材をしていた著者だから、描写できたのが納得出来る位の丁寧さで、全く素人の私にもわかりやすく、読みやすかった。それとともに、まだ生まれて間もない私には想像を絶する程の事故だったのだと感じた。
簡単に言葉で表してはいけないし、ライターや記事を書く方々、決定を降す主人公、被害者、遺族。誰の視点で読んでいくのか、それだけで全然違った作品になると思う。
要所要所で涙が出て、止まらない事もあった。
風化させてはいけないと思う作者の意思が丁寧に物語に綴られていると感じる。
私はもう生まれていて、私より年下の人も生まれていて、遠いようで全然遠くない年月の中に確かに起こった事実で、いま映画化され、多くの人がきちんと知る機会を授けてくれて、よかったと思う。
個人的には
『他のどの山でもなく世界最大の飛行機事故をあの御巣鷹山が引き受けたのだ』の下りが1番心に残っている。
報道の人達が、いつも遺族の方々を思って、新聞を作り記事を綴っていてほしいと思います。