戦争中の青春、私たちが託されたモノおすすめ度
★★★★☆
過去の悲惨な記憶を風化させてはいけない。そんな想いを全編から感じる。
小畑を演じる黒田勇樹の短髪姿がチョット意外だった。小畑は入営前に「学生は勉学が本分…。職業軍人にはなれない」と言ったが、当時の若者も自らの、そして未来の社会を信じて勉学に励んできたはず。国家の都合で戦争にかり出された若者は、国や家族を守るためとはいえ、少なからず無念を抱いて死んでいったろう。
唯一の休暇で自宅に帰った並木は、小畑のグローブを受け取るが、帰隊後キャッチボールをする時グローブに小畑の名前が映し出され、あの穏やかな笑顔が浮かんで涙を誘う。
ラストでは、並木が残された者に託した想いが読み上げられる。エンドコールを眺めながら死んでいった者の無念と残された者の絶望を想い、そして絶望からはい上がって、今の日本の礎を作った偉大な先輩たちを想った。
並木の恋人として美奈子を上野樹里が演じているが、この手の映画ではどうしても女性はワキとして抑えた演技を要求される上、女性的な美しさを制限されるため、あまりいい印象はない(特典DISKの制作発表ではずいぶん派手なドレスだったが)。
並木の投手練習に元巨人の鹿取義隆が当たっている。鹿取は明治大学OBであり、この映画の趣旨に賛同したから。並木がサイドスローなのはそのせい(?)。
魔球を完成させた時の並木の青年らしい笑顔に泣かされた。
メインテーマのピアノと主題歌「返信」が似ていると思ったが、特典映像で加羽沢美濃さんが両曲を同じような手法の、コード進行も似ていることに感動したと語っていた。この映画を見た二人の音楽家が同じような想いを共有して、似た曲ができたということ。
原作と映画は同じ出来かなおすすめ度
★★★★☆
原作を読んでから映画を観ました。
原作と映画の違いは5点くらいありました。
・物語が、現代(2006年)ではなく並木が初出撃したときのイ号潜水艦が攻撃される場面から始まる。
・並木の艇が故障した経緯が記されていない。
・沖田が超脇役。変わって原作本ではかなりの脇役であった伊藤が格上げされている。
・ボレロのマスター、剛原、小畑の影が非常に薄い。
・原作の最初と最後の剛原と北の会話がない。
このくらいの差異は関係ないくらい上手く映画化できていると思います。
最近の戦争映画をいろいろ観てますが、だんだん現実離れした演技になっている気がします。
戦争や生きる為の迫力が欠けている様な気がします。
昭和20年代後半のこの手の映画は俳優自身も戦争経験者だけ在って、
演技にも迫力を感じました。
やはり、死線を感じた差じゃないでしょうか?
ストーリーとしてはよい映画です
おすすめ度 ★★★★☆
この映画は戦争映画のなかでは、<男たちの大和>や<ローレライ>の
ように迫力のある戦闘シーンではないが、戦争映画としては切なく
この戦争はどういうものかが分かる作品です。
戦争映画としてはよい映画です。
概要
市川海老蔵が映画初出演にして主役を務め、歌舞伎界のスターがスクリーンでも映えることを証明した1作。第二次大戦が集結しようとしていた1945年、日本軍が最後の秘密兵器として開発した「回天」に乗り、敵艦に突っ込んでいった若き兵士たちの物語だ。直径1mの回天は1名が乗り込むスペースしかなく、映像からは内部の息苦しさや孤独感が伝わってくる。死を覚悟した兵士たちの悲壮感がその閉塞した空間と重なり、ここでも海老蔵の鋭い眼力が効果を上げることになる。
原作の横山秀夫と監督の佐々部清は『半落ち』のコンビだが、脚本に山田洋次が加わったせいか、キャラクターに親しみを感じさせる展開になった。この手の映画では、時としてしつこく描かれる家族や恋人との別れが、意外にサラリとしており、かえって感動的。そして主人公が甲子園の優勝投手だったという設定がスパイスとなっている。ボールやグローブが物語を彩る小道具として使われるほか、キャッチボールのシーンがじつに爽やかで、その分、戦争の虚しさが伝わってくるのだ。結末の受け入れ方も、観る人それぞれによって変わってくる作品である。(斉藤博昭)