テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)
身分の高い人間が魔女について魔法を身につけるという話はあまりないと思う。普通は王にはなれない立場の人間が力を手に入れるために魔法を身につけて、世界を制覇しようとするような外に向かっていく物語が多い。この作品でも、流された身の王が復権と復讐のために魔法を身につけるのだが、復讐の仕方がなんかせこい。孤島に誘い込んでゆっくりといたぶるというのは大人げないとも言える。しかもシェイクスピア作品の例に漏れず言動は罵詈雑言、極めて俗物なのである。それを取り巻く魔法遣いの弟子や仇敵達も良い勝負の下品さが全開で、復讐譚の人情話の思い入れがなかなか湧いてこない。
芝居を見物していたのは庶民達だったのか、支配者階級もいたのか分からないが、どちらの立場で見ても爆笑であったことは想像に難くない。しかも物見高い見物人をも「乞食には施さないが、死んだインディアンの見物には金を払う奴ら」と揶揄してしまうところは人気劇作家であったシェイクスピアの真骨頂と言えるのではないだろうか。
[メレル] MERRELL Tempest Low
真冬の京都への旅行ため、温かく、転倒を防ぐような足元を万全にできる、降雪時にも対応できるものをと思い購入しました。ハード使用にも対応できる商品なのに、幅広い年齢層でも大丈夫な形と色とデザインでかわいらしく、温かく快適でした。脱ぎ履きも後ろにべろがついているので、靴べらがないところでも不自由はしませんでした。今回購入してとてもよかったです。
Tempest
大編成(実にストリングス・セクションを含んだことさえある)とジャズ的なアプローチが特徴であったバンド、(第一期)コロシアムのリーダーであった、ドラマー、ジョン・ハイズマンがコロシアム解散後に組んだバンドがこのテンペスト。そして、これはその一枚目のアルバムです。
結成当時のテンペストの音楽はとてもユニークなものでした。まず、リーダーのジョン・ハイズマンのドラミングは手数が多いタイプで、今の耳で聴けば、もう少し押さえて叩いても良いのに、とも思えるのですが、技術水準はかなり高い。トニー・ウィリアムスやジャック・ディジョネット、ビリー・コブハム、レニー・ホワイトなどのジャズ系の馬鹿テク・ドラマー達がジャズサイドからの ビート、 ビート的アプローチをはじめた頃、ロック・ミュージックからのジャズ的アプローチへの接近、その先駆者の一人が、このジョン・ハイズマンであったと言えます。だから、この『テンペスト』というレコードでも、まるでエルビン・ジョーンズのようなフレーズが聴けたりします。
しかし、テンペストの音楽を最も特徴づけているのは、ギターのアラン・ホールズワースのとんでもないプレイです。そしてまた私は、アラン・ホールズワースの最高のプレイが聴けるのはこの盤だと思っています。アラン・ホールズワースはプリングオン、プリングオフを多用した、とてつもなく早くて流麗なフレージングを組み立てるので高名なギタリストですが、私にとって、このレコード以外のアラン・ホールズワースは、流麗すぎて引っかかる物がない、というか、何かが欠けているようにさえ感じられて、ピンとこないのです。でも、この盤での彼は違う。もう、本当に良く唄い、良く盛り上げています。
この盤の制作後随分立ってから、彼はあるインタビューで、“ピッキングの音が嫌いだから、ピッキングを極力減らしてプリングオン、プリングオフを多用し、流れるようにギターをサウンドさせる事に最近は気を使っているんだ”という内容のことを言っていました。それはもう、彼の独自性というか、哲学なのだろうと思います。しかし、それが彼のギターを、私にとってはピンと来ないものにさせたのではと思うわけです。と言うのは、テンペストの盤で聴ける、ピッキングの音がしっかり聴こえる、彼のギターは迫力に満ちてとても魅力的だからです。
テンペスト盤での彼のプレイはフレージング、リフの組み立て、コードワーク、どれをとっても驚異的に個性的で、一聴、これは何処でも決して聴いたことがない音楽だなあ、と吃驚してしまいます。なんでこんなにもアブストラクトなリフが、こんなに格好良く響くのぉ?!とこの文章を書きながら聞き返していても恐れ入ってしまいます。まったく、隅々まで、何時聴いても新鮮な驚きに溢れた音楽がここでは展開されています。兎に角、一体どんな音楽を聴いて育つとこういうプレイを組み立てるようになるのだろうか、という事が全く想像もつかないのです。ギタリストが多用する、ペンタトニック的な展開が殆ど使われない。と言っても、ビバップ的なジャズ語法も全く感じさせない。本当に不思議な個性です。
それからギター、ドラム以外では、ポール・ウィリアムスのブルーアイド・ソウルを思わせるフィーリングの、太くて迫力あるボーカルも素晴らしい。これもなかなか聴かせます。多分、彼のベストプレイもこの盤なのではないでしょうか。
なお、この、“テンペスト”と題された、一枚目のアルバムはこのように傑作なのですが、二枚目は凡作です。と言うのは、ギタリストがアラン・ホールズワースから、オリー・ハルソールにチェンジしている上、どうも中途半端に大衆受けを狙った路線で作られており、一作目のレベルを期待するとがっかりしてしまいます。
こどものためのテンペスト (シェイクスピアっておもしろい!)
シェイクスピアって、おもしろい!(Shakespeare Can Be Fun!) と本の表紙にあるように、代表的な傑作ばかりをカナダの小学校の女の先生が子供向けに書き直し、世界中で絶賛された素晴らしい絵本です。子供たちの描いた絵がじつに可愛いのです。英語を学びはじめた孫娘のために買ってやったのですが、そばからちょっと借りて読み出すとなんとこれが面白い。その昔、私も大学の英文科でシェイクピアを原典講読で勉強したのですが「ハムレット」を三分の一も読みきれずに終わり、くやしい思いをひきずっていました。でも、このシリーズでシェイクスピアの全体像がやっとつかめた感じです。対訳ですから、シェイクスピアの名台詞がそのまま英語で読めるのがうれしいし、子供向けにやさしく語られた翻訳の日本語も素晴らしかった。こんな本がもっと昔に出版されていたら!