読め、そして感じろ!おすすめ度
★★★★☆
サルトルの短編から中編の小説を集めた一冊です。
この本のとっつきにくさは否定しません。翻訳作品の読み辛さに加え、内面描写が延々と続く点などは人によっては辛いかもしれません。
でも、これ以上にとっつきにくい本なんて星の数ほどありますし、難解過ぎることも決してありません。これは、小難しく実存主義なんてお勉強してなくても、十分楽しめる一冊だと思います。
確かに、ここに収められている作品には実存主義の思想が織り込まれています。しかし、それが知識として実存主義をよく知らない人に解釈を拒むことにはなりません。むしろこの本を通して、実存主義に関してよく知らない人でも、実存主義そのものを感覚として知ることが可能なのです。
また、仮にこれらをはじめとするサルトルの小説が、ただ彼の思想を流布するためだけのものだったなら、今日、彼が作家として語られることは無かったでしょう。
彼が哲学者という肩書きと同時に作家という肩書きを得たのは、彼の小説が純粋に小説としての面白さを持っているからではないでしょうか。
私自身、実存主義なんて知らなかった時にこれらの小説を読みましたが、小説として大変刺激的で面白いものでした。
「壁」の緊張感溢れる魅力、「一指導者の幼年時代」の自己欺瞞に対する視線。サルトルの鋭さに痺れること請け合いです。
言葉を根気強く追い、流れに身を任せ、なおかつ想像力を働かせる。
この本を読むには、実存主義の知識よりも、感覚を研ぎ澄まして挑むことが必要だと思います。
不条理とは痛快でもあったり儚くもあったりおすすめ度
★★★★★
この本はサルトル流の不条理が織り込まれた短編小説集である。
私ははじめ哲学者としてのサルトルを意識して
彼の哲学書の参考書としてこれを読もうと構えて読み始めたら
とても面白くて肩透かしを食らわされた。
同じ不条理小説でも
カフカの「変身」やカミュの「異邦人」とは違って
分かりやすくとっつきやすかった。
特に、中に書かれている「壁」や「エロストラート」は
十分エンターテイメントして楽しめます。