宇宙戦艦ヤマト (1) (MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー)
ヤマトブーム当時から出版されていた「ひお・あきら」版ヤマト。その何度目かの再販が今回の文庫版のシリーズです。
最初に「ひお・あきら」版ヤマトが登場したのは、1970年代の後半でしたが、当時中学生だった私は、ヤマトといえば、やはりスタンダードはTV版という考えがあったので、このコミックもそして、松本コミックさえ、それぞれに満足出来るものではありませんでした。
でも、今、読むと、このひお版には、ある種の熱さ…サービス精神とでも云うんでしょうか、そういったものを感じます。
とりあえず、ネタは全部放り込む、力の限り戦闘シーンを描く・・・出きる限りストーリー性を尊重する…!
名作といえるでしょう。このコミック版には確実に「旅」が描かれてますから。
少年マンガという分野の成熟過程の一環を垣間見ることもできます。
これで、沖田艦長がもっと渋くて、ヤマトがしもぶくれでなければ、僕にとっての理想のコミック版だとすら思います(でも、それすらも味だと思える今の自分が居ます)。
また、元々ヤマト題一作は50話弱のシリーズとして予定されていたところ、視聴率が振るわず、半分の26話に圧縮された経緯がありますが、このひお版ヤマトでは没になったプロットやキャラクターが登場しており、ヤマトという作品をより深く味わう一助になると思います。
さらば宇宙戦艦ヤマト―愛の戦士たち (2) (MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー)
さらば宇宙戦艦ヤマトはビデオやDVD版より、このコミック版がお薦めです。
違いはほとんどありませんが、不思議な魅力が詰まっています。
愛すべき作品です。アニメとは違う印象を受けます。たぶんキャラクターデザインのせいでしょう。古代進が優しい美形キャラになっています。
私はさらばは、ひおあきら版が一番だと思います。
宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち (MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー)
古代守のことを心配しつつもヤマト発進を逡巡する古代を決意に導く森雪のシーンや真田のアクティブな活躍シーン(コスモタイガー搭乗)などカットされたシーンが再現されてます。「新たなる」ではDVDの特典映像等でも静止画像で一部鑑賞できるだけの場面ですし、そういう意味では貴重かも。
2005年に再販されたこのバージョンでは巻末の解説が出渕裕さん。ヤマトIIIの設定やメカニックデザインの裏話が披露されていて興味深いです。
さらば宇宙戦艦ヤマト―愛の戦士たち (1) (MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー)
独自色を抑えた映画の忠実なコミック版となっている。映画シナリオを基にしたセリフ等は本編と全く同じ。また、ヤマトをはじめとするメカニック群については、アニメの設定資料画を活用することにより、本編とのイメージのずれがあまりない。ひおさんの個性が残っているといえば、南部の眼鏡がサングラスになっていることぐらいだろうか。ビデオがまだそんなに普及していなかった時代、その代役を果たそうとした書籍群のひとつである。そして、それは成功していたと思う。
映画本編ではカットされた、土方のヤマト艦長就任の件が読めるので、資料的にも価値がある。
宇宙戦艦ヤマト完結編 (MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー)
映画の忠実な劇画化版。
現在市販されているDVD等は70'o完全版だが、このコミック版はそれ以前のバージョンのシナリオを元に描かれているため、35ミリ版のセリフ、35ミリ・70ミリ両方からもカットされてしまったシーンがそのまま残っている点、資料として興味深い。映画公開時に出された小説版と違って著者の創作部分が全く無い点が却って資料性を高めている。職人に徹したひおさんの功績だ。
さらに、本書は、ひおさんの後書きがある。作品や時代への愛を感じるコメントで素晴らしい。