スウーン(紙ジャケット仕様)
天才パディ・マクアルーン率いるプリファブ・スプラウトのデビュー作。次作があまりにも強烈なインパクトを放っている為か、今となっては「プロテスト・ソングス」辺りと並んで少々地味なポジションに置かれているが、これも紛れもない名作。基本的にこの人達の作品に関しては5つ☆以外の評価はありえないと思っているので、このアルバムも当然ながら☆☆☆☆☆。それにしてもここでの各楽曲のヒネクレ具合は凄い!の一言。いったいどうやったらこんな奇妙なポップソングばかり作れるの?というぐらい不可解な転調の連続に眩暈すら覚える。が、ある種の清涼感というか、爽やかさを伴っているという所がこの人達の真骨頂。ある意味彼らの全ディスコグラフィー中、最もアクが強いアルバムとも言える。エルヴィス・コステロが絶賛した名曲15を筆頭に、234678等彼らでしかありえない、一切のルールを超越した奇妙かつパラノイアックなポップ・マジックが炸裂!当時よく比較されたロディ・フレイムやエドウィン・コリンズといった人たちよりもむしろ、アンディ・パートリッジと共通する部分が多く感じ取れると思う(特に本作は)。パディ・マクアルーンの個性的なソングライティングの妙が横溢した、名盤。
Andromeda Heights
捻くれた、というよりも捻くれすぎていたファースト。(超名盤)
セカンド以降はそんなに音もアレンジも変わっていない
と私は思う。
パティは「とにかくいい曲を、ロマンチックな曲を作りたい」
なんて言っていた。
このアンドロメダハイツも勿論その流れに沿うものだ。
1のイントロを聞けば誰もが理解してくれるだろう。
Steve Mcqueen
最も好きなレコードの中の一枚。自分は、過去に国内盤と輸入盤を購入していて、今回で3枚目になり、買おうかどうしようか正直、迷った。だが購入の決め手は、やはり新録のアコースティックバージョン8曲だった。随分アルバム発表のないプリファブなので、今のパディの歌声をどうしても聴きたくなったのだ。
だから、気分としてはDISC2欲しさだけで買ったわけだが、なんのなんのリマスタリングされたオリジナルであるDISC1の新鮮なこと!! まさか、ここまで明確に音が良くなっているとは。とにかく、音の一つ一つがくっきりしたし、パディのボーカルが、ものすごくきれいに伸びている。さすがトーマス・トルビー、相当入念にやってくれたに違いない。そしてこうやって高音質になって聴いていると、少しも古びるどころか、最近の他の新譜よりもずっと新鮮に響いた。なんというクオリティの高さなんだろうとしか言いようのない感動。
もちろん、お目当てだったDISC2のほうも、職人気質のパディのこと、一筋縄ではいかない細かいアコースティックアレンジで、こちらはこちらでとても素晴らしかった。とはいえ、正直言うと、やはり稀代のメロディメイカー、パディ・マクアルーンには、もっともっと曲を書いて欲しいわけで、僕はきっとブラジルの偉大なるメロディ・メイカー、ジョアン・ドナートが隠居状態から、突如、取り憑かれたように活発に活動をし始めたように、パディもまた、その誰にも真似できない天才的作曲センスを爆発させた作品を生み出してくれるものだと信じている。
Jordan:the ep [Single-CD]
後追いでネオアコを聞こうと思い、最初に買ったのがアズテック・カメラとオレンジ・ジュースの1st。でもその80Sな音処理にどうも馴染めず、「これならフリッパーズ・ギターの方が全然いいや」という感じでしたが、次に買ったペイル・ファウンテンズの1stとこのアルバムは素直に良いと思えました。後者2組に共通するのはバックグラウンドとしてガーシュイン、コール・ポーター、バカラック、ジミー・ウェップetc.を感じさせるソングライティング、アレンジが聞けることで、特にこのアルバムでのパディ・マクアルーンのソングライティングはそうした往年の名作曲家の作品と同様クラシックを呼べる域に達しています。(このアルバムの5曲目が90年代の曲なんて滅多にかかることのない山下達郎先生のラジオ番組で紹介されているのを聞いたときはちょっと感動しました。)
今年リマスタリング+新録アコースティック・バージョンで再発された「STEVE McQUEEN」が素晴らしかったので、このアルバムも同様に再発してくれるとうれしいです。
From Langley Park to Memphis
このアルバムを一言でいうと、とにかく捨て曲がないこと。全曲プリファブならではの高品質でウイットに富んだ素敵なポップスを奏でている。そんなのプリファブのアルバム全てに言えることじゃないかと思うかもしれないが、その一連のディスコグラフィーの中でも、一際粒が揃っているのがこのアルバムだと思う。アルバム全体を通したコンセプトものが多い彼らのアルバムの中で、ここでは1曲単位で、極上の良い歌を書いていこうというパティの決意みたいなものがこのアルバムからは感じられる。プロデュースを、トーマス・ドルビーだけでなく、何組かを分けて起用しているのも、そういう意図からだと思う。
曲は、M1、M2とプリファブ史上最もキャッチーな曲で幕を開け、その後は3曲極上のバラードが続く。このアルバムのすごいところは、バラードが続いても、その1曲1曲のクオリティが果てしなく高く、いちいちため息をついてしまう素晴らしさというところだ。一緒に歌ってみると、そのメロディがなめらかなようでいて、とても練り込まれているということに気付くと思うが、珍しいコード展開をしながらもスムーズな展開を持つ曲、つまり普遍性のある局作りをするようにパティの作曲法が移行していく途上だったのかもしれない。続くM6は、プリファブを代表する大名曲。サビの美しさは一度聴けば、忘れられないだろう。その後も一風変わったコード展開のM7、シンプルなロックチューンM8、これまた極上バラードのM9、M10と続き、アルバムは全く捨て曲なしに終わる。ラスト2曲のあまりに美しいメロディを聴き終わる頃には、このアルバム自体の良さとかを飛び越して、音楽そのものの素晴らしさに感嘆したくなるような気分になっていることだろう。それくらい完璧な一枚だと思う。