Europe: A History
まず、おもしろい。それも半端じゃなく、おもしろい。
ミクロに見れば、文章の端々からユーモアがこぼれ落ちる。悲劇のときも冗談をおりまぜ、偉大なことにも軽口を忘れない。
マクロに見れば、そもそもヨーロッパというのが、実におもしろい。最高の人間達が侃々諤々アタマを突き合わせ、実に愚かな失敗を、それも何度も繰り返してきたという風にも読めるし、まったく下らない取るに足らない人々が、自分でも何をやっているのか分からぬうちに、すばらしい金字塔を打ち立ててきた、というふうにも読める。
歴史を、その国の「偉人達」の活躍だけで埋めて、ただ国民感情を鼓舞しさえすればよいと考えている人たちや、あるいは拭いきれない愚かしさや情けなさを、ただ嘆いておけばいいと思っている人たちは、きっと歴史をこんな風には描いてみせることなんて、思いもつかないのだろう。
歴史学者でも、歴史煽情家(デマゴーグ)でもない、歴史家は、こんなにも人の知恵と心の糧になる歴史を、書いてみせることができるのだ。
ロンドン在住の歴史家ノーマン・デイヴィスには、最近刊に、満を持して出たイギリス史The Isles: A Historyなるものまであるらしい。「神の遊び場God's Playgroud」(!)という題のついたのポーランド史とともに、ぜひとも読みたくなる。