裏閻魔
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近代の日本を舞台に、彫物師の秘術「鬼込め」により不老と高速治癒の力を得た青年の歩みを描く長編小説です。5章構成で20歳、37歳、44歳、49歳、99歳の主人公を襲う血なまぐさい出来事を語ります。
中盤以降、物語を引っ張るのは、主人公の姉の仇で兄弟子でもある「もう一人の不老者」です。時の止まった主人公と年齢を重ねていく女性との関係がもう1本の縦糸になりますが、主人公はここでも受身です。いざ追い詰められると「死にたくない」と願うが、さりとて生きて何をしたいわけでもない。鬼と鬼の宿命の対決、不老者の切ない恋、どちらもエモーショナルに盛り上げられる題材ですが、作者は静かな主人公を淡々と描きます。これは私の好みにドンピシャでしたが、「ヒーローの活躍」を期待すると肩透かしになります。
本作の物語展開、世界描写、キャラクター造形、台詞回しなどはライトノベル的。設定上の舞台は近代日本ですが、リアリティは乏しい。彫物師の技術や、その仕事と生活の描写にも取材の跡が伺えません。また登場人物はみな不老か否かを問わず精神的に加齢を感じさせません。とくに4章と終章とは半世紀の年月で隔てられていますが、作者はその重みを描写せず、設定のみ示して読者の想像に委ねます。
ただ……これは硬派な装丁の問題です。本来この作品が対象とする読者にとって、私が列挙した本作の「物足りなさ」は、むしろ「のどごしのよさ」として機能するはず。ですから、商品として誠実であろうとするなら、ことぶきつかささんの素敵なイラストは、カバー帯ではなく装画に用いるべきでした。読者を限定したくない事情は理解しますが、商品は外見で対象層を指定するのが親切だと思う。
私にとっては面白い作品でした。しかし、本書の装丁や帯の惹句と実際の内容には多少のズレがありますので、自分向きの作品かどうか、一考の上でお買い上げください。
蜉蝣-かげろう-
コテコテのB−Tって感じで、そこが耳に非常に心地よい。美しさが身にしみる曲。頭の中がシステマティックになっていたが、それをぶっ壊してくれたダークなロマンティシズムに感謝したい。櫻井氏の歌詞は私にとって破壊以外何物でもない。