松井伝説のはじまり、と記憶されるころになる’92年のあの日。全打席敬遠はいくら何でもやりすぎで前にランナーがいないときくらい勝負してもよかったのでは・・とか戦略そのものの是非論と「教育の一環」としての高校野球において適切だったのかという根本論がないまぜになり、立場によって捉え方が大きく異なるこの事件・・。著者がいうように、15年という時を経たからこそ可能だったと言える迫真のスポーツノンフィクションです。「主役」である星陵・松井、明徳監督の馬渕は言うに及ばす、9回星陵3番で3ベースを放った山口、そして5番・月岩・・。「打っていたら人生が変わっていた」のか?明徳の捕手は当時報道されたように本当に「甲子園なんか来なければよかった」と言ったのか?勝つことに徹底した馬渕に対し、試合後、「勝負して欲しかった」と語った星陵・山口監督はプロ失格なのか?様々な疑問のピースが著者の丹念なインタビューに紡がれ最後に大きな「絵」が浮かび上がる。単純な二元論でなく、「真実」を見極めようと事象を掘り下げた著者の努力(執念?)に敬意を表します。
高校野球とはいったいなんなのかおすすめ度
★★★★★
事がおこってからの年数とその性質、特待生問題で揺れるこのタイミングを考えるとだいたいの落としどころは読む前からこの辺かなと想像はつく。
がそれに至るプロセスが非常に興味深い、筆者はさすが俺ならばかける!
と思い立っただけの事はあると感心。
自分の足で裏をとり客観的な視点から当事者たちの声をもとにあの試合を再現している。
僕たちギャラリーにとってあの試合は既に遠く過去の物となっているが(実際書店でこの本を見たときもなんで今更という感じだった)
しかし、あれだけ騒ぎたてられた当事者たちはいったいどうなったのか
無責任に騒ぎ立てた僕たちはそれを知るべきなのではないだろうか
それにしても最後に出てくる某新聞社の方は頂けない、裏も取らずに自分の感情で記事を書き上げたようだ
きちんと事実を伝えようとする記者もいれば、自分の考えを新聞という媒体をつかって一方的に伝えようとする記者もいる
僕たち読み手もその様々な側面から記事を読み解くようにしなければいけないなと痛感
高校野球観が変わった!
おすすめ度 ★★★★★
松井秀喜の5連続敬遠の当事者たちを、ニューヨークで松井に、高知で馬渕に、石川で山下に、さらに両チームのメンバーを取材し、
それぞれの立場、考え方から、あの試合を振り返るノンフィクションもの。
「俺ならわかってやれる。10年後、彼らに会いに行こう」(プロローグ)と天命を受けた
著者の粘り強い取材と筆力で、あの5敬遠が鮮やかによみがえる。
この夏、お勧めの一冊。
私はこれを読んで、高校野球観が変わった。