”ゆく川の流れは 絶えずして しかも もとの水にあらず”宗教は違えど、この映画の到達点はこれに近い。「流れる、この全てに、お行きなさい」と、レッドフォードは観る者にやさしく語りかける。モンタナを流れるフリーストーンの流れに身を置き、ハッチを待ってのフィッシングタイム。私の様な、釣り人にとっては、そんな時間をすごしたくなってしまう魔法の映画だ。ポールは帽子につけた数本のフライで、(故郷の川を知り尽くした余裕で)魚を経験と勘でサイトし、慎重にストーキングしつつ、攻撃的に釣り上る天才タイプ。ノーマンは、繊細にタイイングされた、多数のフライの中から、慎重に、マッチ・ザ・ハッチで一本を取り出し釣り上る、基本に忠実な秀才タイプ。この対比が、物語とシンクロしているのが見事だ。レッドフォード本人も、フライフィッシャーであったからこそ、この作品が生まれたのだと思う。カメラワークと風景の撮り方も見事だ。ハッチしたフライ達が、みなもと、陽の光で輝く中で、ポールがフライロッドを振るシーンが素晴らしい。この映画に魅せられ、フライフィッシングを始めた方がブームになるほど出現したが、それが、この作品の凄さだと思う。鑑賞でなく、体感でもなく、観た者が、みなもの中に身を置きたくなる、まさにタイトルどうりの名作といえる。 ―そうそう、若輩な私が川の中でつぶやく言葉、それは、このレビューのタイトルに、ループを描きながら着水している。88点
心が洗われる映画であるおすすめ度
★★★★★
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概要
ブラッド・ピットの名が一躍、ハリウッドに飛びだすことになった作品だ。まだ若かった彼の、初々しくさわやかな笑顔も魅力だ。
牧師の家庭で厳格に育てられた兄弟。だが、エリート大学の大学院を卒業した生真面目な兄ノーマンと、自由奔放で天真爛漫な弟ポールとは、正反対の性格だ。成人してからは違う道を歩む2人だが、ポールはその無鉄砲な性格から賭けポーカーにはまり、危ない道に入りこむ。 モンタナの雄大な自然をバックに、父親に習ったフライフィッシングをとおして成長し、人生を学んでいくさまが描かれている。自然の完璧なまでの芸術性の前で、人が美しく生きるとはどういうことなのかを考えさせられる。モンタナの自然の美しさを存分に楽しめる作品でもある。森を流れる川のせせらぎや、水面に反射する日の光、言葉のつむぎ方など、全編をとおしてロバート・レッドフォード監督らしい詩的な感じが漂っている。(梅澤眞由美)