”it ”が放つ不思議な違和感。おすすめ度
★★★★★
舞台は二十世紀初頭まだ豊かでなかったころのアメリカ、ある田舎に暮らす牧師一家を巡る物語である。
原作者のノーマン・マクリーンはかって大学で教鞭をとっていた英文学者、彼の若き日の自伝的小説「マクリーンの川」は、エマーソンからソローらに継承た自然描写を基軸とする伝統的アメリカ・ルネッサンス文学の形態で複数の家族内の人間模様を描いている。
ロバート・レッドフォートによって映画化された「マクリーンの川」は撮影に10年を費やし、名手フィリップ・ルースロの秀麗なカメラワークは1992年度のアカデミー賞最優秀撮影賞に輝いた。
マーク・アイシャムの手になるアイルランド調の牧歌的なテーマ曲も、饒舌すぎず静かに作品を彩る。
ゆったりとした時間の流れの中で、淡々としかも暖かく語られていく人々の出会い、その背景で煌く光に満ちた自然、そして残酷な別れ、、、。
ところで、映画のタイトルの中で”it”が放っている不思議な違和感は何だろう。
someplace;「どこかの場所」ではない「それ」とは一体何を示すのだろう。
映画の最終盤、年老いた主人公の独白により、私達はやっと「それ」が彼の内なる存在であるらしいことに気付く。
そして「River」も実在する川ではなく、彼の精神世界に注ぐ川なのだと気づいたとき、"it"の謎は解ける。
その時、あなたの心の中には澄んだ水を豊かに湛えた淵が現れ、モンタナの自然と渾然一体となった老人の深い瞳を見ることだろう。
その深遠を覗き込んだあなたは、自分にとっての”it”を探す旅にいそいそと出発するのである。
[蛇足]若き日のレッドフォートを彷彿とさせるブラッド・ピットの笑顔、彼のパフォーマンスは、以後この映画をこえることが出来たのだろうか。
光の中のキャスティングシーンおすすめ度
★★★★★
In our family,there was no clear line between religion and fly fishing.
で始まる原作を映画のシーンを思い浮かべながら読んでいます。
水面に反射する光の中でのキャスティングシーンが美しく
モンタナの雄大な自然に魅せられました。
流れの音だけの静けさは言葉では語ることができない人生の多くを伝えてくれます。
昔見たビデオが良かったのでDVD版を買いました。
くったくのない笑顔の少年時代のブラットピットに会えます。
ブラピの映画というより、芸術性の高い素晴らしい監督の作品だと思います。
釣りキチギャンブラー自己破滅型おすすめ度
★★★☆☆
釣り好きの弟ポール(ブラッド・ピット)がポーカーに狂って自滅する、ただそれだけのお話。フライ・フィッシングをやらない人にとっては、若き美青年ブラッド・ピット以外特に見所はない。起伏のない緩慢なストーリーが、故郷モンタナを流れる小川のように観客の前をただとおりすぎ、後には何も残らない。ネオリアリズムを意識しているわけでもなく、原作をただ映画化しましたよ、という感じの作品だ。
弟ポールが連れていたインディアンの女の子との関係が、人種差別的なお話に発展するのかなぁと思いきや、いつのまにか女の子はいなくなり、次にスクリーンに登場した時にはギャンブル狂いのダメ人間にポールが大変身している。兄貴のノーマンが大学に通っている間の出来事らしく、きっかけもよくわからない。
幼少期から青年期まで同じ役者さんが兄弟の両親を演じているが、老けメークが下手なため歳のとり方が不自然で、ドリフターズのコントのように見えて絵がとても嘘っぽくなってしまっている。スローモーションで釣りのシーンを叙情的に撮ったらどうなるだろうと、R・レッドフォードが実験してみたかった映画のような気がしてならない。兄のノーマン役がタカ&トシのタカにクリソツなのには笑えます。
レッドフォードの映像観がブラピに完全にマッチしている。おすすめ度
★★★★★
ブラピ演じる青年の美しく可愛い笑顔と、ヤクザに命を狙われる程の無軌道な行動とのギャップが、この映画のスパイスだと思う。
キャスティングおすすめ度
★★★★★
キャストには「投票」という意味があるらしい。CDではちんぷんかんぷんな翻訳がされている。
アメリカでは釣りを通して人生が語られることがあるのだ。釣りは人生の一部であり、人生の多くを釣りに費やす人間もいる。
多くを語らなくても隣にいるだけで分かり合えることがある。そんなことがさりげなく語られている映画だ。
若きブラッド・ピットはレッドフォードそっくりだった。振り出されたラインは魚をおびき出し、私たちを感動の中に包み込む。
概要
ブラッド・ピットの名が一躍、ハリウッドに飛びだすことになった作品だ。まだ若かった彼の、初々しくさわやかな笑顔も魅力だ。
牧師の家庭で厳格に育てられた兄弟。だが、エリート大学の大学院を卒業した生真面目な兄ノーマンと、自由奔放で天真爛漫な弟ポールとは、正反対の性格だ。成人してからは違う道を歩む2人だが、ポールはその無鉄砲な性格から賭けポーカーにはまり、危ない道に入りこむ。 モンタナの雄大な自然をバックに、父親に習ったフライフィッシングをとおして成長し、人生を学んでいくさまが描かれている。自然の完璧なまでの芸術性の前で、人が美しく生きるとはどういうことなのかを考えさせられる。モンタナの自然の美しさを存分に楽しめる作品でもある。森を流れる川のせせらぎや、水面に反射する日の光、言葉のつむぎ方など、全編をとおしてロバート・レッドフォード監督らしい詩的な感じが漂っている。(梅澤眞由美)