1つ1つが映画のようにおすすめ度
★★★★★
色褪せない音楽と映像とともに、蘇える鮮やかな青春の思い出。
小山田圭吾と小沢健二。
彼らは最初から最後まで、シニカルな笑いを浮かべて私達を騙し続けたアーティストであることを再認識した。
俗な言葉で言うと、最高にカッコイイ。
「本当のこと/何も言わないで別れた/
レンズ放り投げて/そして全て終わるはずさ/」(camera!camera!camera!)
フリッパーズが解散したときは本当に悲しかったけど、
彼らが突然解散したことも、その後今現在に至るまで全く2人がそのことに触れず、なかったことにさえなっていることも、全て最初から決まっていた、いつもの彼らのジョークのうちの一つかもしれない、と、これを観た時思った。
彼らがこの3本のフィルムを残し、そしてそれが10年の時を越え1本のDVDになり、それが手元に在ることに感謝したいと思う。
今見ても、嫉妬するほど、かっこいいおすすめ度
★★★★★
フリッパーズ・ギターがデビューした88年、私は既にサラリーマンだった。もちろん小沢健二も小山田圭吾も年下だ。
70~80年代ずっと洋楽を聴いてきた私には、それまでの日本の音楽シーンとは何の関係もなく、突如こんなバンドが出現したことは衝撃だった。それは、音楽のクオリティ、やりたい放題の立ち居振る舞いもそうだが、その存在感の輝きに対しての嫉妬心があったと思う。単純に「こいつら今風の娘(当時の、ね)にもてるんだろうな」というのも含めて。(男っていやーね)
その後出た大量のフォロアーと比べフリッパーズが突出した存在だったことは、今だにCMなどに頻繁に使用され続けることからも明らかだが、ネオアコ風の登場から、わずか3年ほどで「ヘッド博士...」の世界に走り抜けてしまったことは、他のバンドとは初めからやりたいことが全く違ったということだろう。
その輝きと変遷のスピード感を追体験できる貴重な映像作品。今見るとPVのつくりやお遊びを多少古臭く感じるかもしれないが、その存在感と音楽性は変わらない。
「グルーヴ・チューブ」から「奈落のクイズマスター」の流れで、なぜか涙が出た。10年以上前の音楽にこんな風に心を動かされるとことも、また、くやしい限り。
概要
フリッパーズ・ギターが残した3つの映像作品(「The Lost Picutures」「Original Clips&Cms」「Testament」)をひとつにまとめた、お買い得感いっぱいのアイテム。フリッパーズをリアルタイムで経験した世代の人間(僕もアニエスbのホワイトジーンズ×ボーダーシャツで渋谷のレコード・ショップをハシゴしてました…)にとっては「ふたりとも若い! キラキラしてるよ~」というのが第一印象だったりするが、楽曲自体のクオリティ、映像センスの良さは、まさにタイムレスな魅力に満ちあふれている。
ネオアコ~ギター・ポップの要素を取り入れた初期、日本語の歌詞をおしゃれに響かせるテクニックに驚かされる中期、アシッド・ジャズ~マンチェスター・ムーヴメントを同時代的にインストールした後期。フリッパーズ・ギターが刻んだ軌跡をキュートな映像で追体験できる本作は、日本の音楽シーンが(少なくとも、音楽のクオリティに関しては)もっとも輝いていた時期の記録といっても過言ではない。たとえば10代のキッズがコレを見れば、「日本にも、こんなにかっこいいバンドがあったんだ?」と驚くことになると思う。しかしカワイイかったなあ、2人とも(特に小沢)。(森 朋之)