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セント・メリーのリボン (光文社文庫)

稲見 一良
おすすめ度:★★★★★
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自然賛美、犬賛美している、大人の為の素晴しいハードボイルド
おすすめ度 ★★★★★

「焚火」
「花見川の要塞」
「終着駅」
「麦畑のミッション」
「セント・メリーのリボン」
の五作が収録された珠玉の短編集。
ハードボイルドと流布されているが、
戦争ファンタジー(戦争メルヘン?)の「花見川の要塞」が大傑作。
これは長編で読みたかったな。
同じく戦争物の「麦畑のミッション」もイイ!
望月三起也や松本零士や新谷かおるや島本和彦の戦場マンガや、
仮想戦記ものが如何にくだらないか痛感できます。
「終着駅」は並。
「焚火」「セント・メリーのリボン」はハードボイルドだが、
都会派ではなくて田舎派なのが凄く新鮮。
大都会で気取っているハードボイルドってチャンドラーのパロディにしか思えないが、
本書は、自然賛美、犬賛美している大人の為の落ち着いた素晴しいハードボイルドである。
「焚火」はいきなり最愛の女性が銃撃され殺されるシーンから始まるので感心したぞ。
普通のハードボイルドなら復讐譚になるところだが、
主人公は逃げるだけ。
敵を撃退するのは渋い農夫の爺さん(この爺さんがデラかっちょええ!)
若者に媚びてない大人の為の小説である。
「不夜城」の五倍以上の価値がある傑作集。
都会で苦悩する青年は馬鹿としか思えない。
自然が豊富な田舎に行けば癒されるのに、
都会に拘るから酷い目に会うざんすよ。
構成力、表現力はややヘタクソだが、
作者の志の高さは伝わってくるので、
稲見一良は全作読むべき作家である。
こんな素晴しい作家がもう死んでいるなんて、
神が存在しない証拠だな。



傑作次作を読む前に本作は必読です
おすすめ度 ★★★★☆

本作でデビュー?した猟犬捜し専門の探偵、竜門。相棒のジョー(犬)と一緒に事件を解決する。と書くとチョット触手は伸びないかもしれませんが、良質なハードボイルド小説集となっています。ハードボイルドを「男の生き様を描くこと」と定義すれば、本作は紛れも無く、ハードボイルド小説、それも第一級品です。
短編集ですので、気になった人は手にとって下さい。でも表題作だけではなく、他の編についても、男の物語が詰まってます。フライパンで脂の塊とハムを焼くシーン。よだれが止まりません。
しかしもう作者の新作を読むことができません。このような良質なハードボイルド作家を私はこれまで見逃してました。人生はただ一度。全ての作家に出会えることはあり得ません。本作を描いた稲見一良と出会えたことを素直に感謝したいと思います。



去年の私のベストワンです
おすすめ度 ★★★★★

稲見一良のことはまったく知らなかった。今回「この文庫が凄い」で06年度第二位になったことで読んでみた。結果、ずーと手元においておきたい一冊になった。値段は税込み500円。本の厚さからいって100円ほどサービスしているような気がする。稲見一良の文章を広めようとして、遺族・出版社ともに儲け部分を削ったのだろうか。そう、稲見一良はすでに故人だ。活躍期間は89年から94年の5年間のみ。5冊の本が残された。処女長編「ダブルオー・バック」を刊行した時点で、医師から余命半年と宣告されていたと言う。

ガンはいつの間にか特別な病気ではなくなった。ガンを克服する人は多い。ガンで亡くなる人はさらに多い。ガンを告知されて、余命を延ばしながら素晴らしい仕事を成し遂げた人も枚挙にいとまない。例えば、余命は延ばさなかったが、「一年有半」の中江兆民、近くは約一年と少しで五冊の著書と旺盛な講演活動をした考古学者佐原真、今現在闘っている辺見庸。

みんなに共通しているのは、死を見つめていない、ということだ。死は見つめなくとも目の前にある。だとしたら、見つめるのはそこからしか見えない生の世界だ。とくに稲見一良はその人柄か、本当にやさしく見つめている。

中篇「セントメリーのリボン」で少女は犬専門のこわもての探偵、竜門卓に言う。
「無愛想に見えて、気配りのある優しいお人やから。」
「わたしがか?」
「とぼけてもだめ。自分でもわかっているはずや‥‥‥」



感動に飢えている方に
おすすめ度 ★★★★★

残念ながらこの作家の本をもう読むことは出来ません。
男の矜持と銃を書かせたら日本ではトップクラスの作家だと思います。
短編集ですがどれも心を打つ作品ばかりで、何故か心に残ります。
私は多分10回は読んだと思います。
ふと本棚で見かけると手に取る、そんな本です。



男の矜持
おすすめ度 ★★★★★

これほどまでに切なく、暖かく、引き締まった文章は
滅多にお目にかかれるものではない。
ハードボイルドとしての空気感以上の余韻。
全く惜しい、この作家がもうこの世にいないなんて。


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