頑なまでの美意識、独特の禁欲的で透明な文体、エロティックなホモ・シーンなど。こういう世界が好きな人にはたまらない内容である。流行のやおい小説やボーイズ・ラブの先駆者といえるかも。
仏蘭西映画のような美しさおすすめ度
★★★★★
4編中3編が同性愛ものですが、別に「ゲイ」という部分に重きはなく、
とんでもなく綺麗で贅沢で現実離れした、惑溺しそうな恋愛小説集です。
森茉莉の耽美ものは、好き嫌いが激しく別れるかもしれません。
句読点の打ち方や漢字の使い方が独特で、そこも好みの別れるところでしょうが
ちょっと真似したくなるような魅力があります。字面の美しさはこの作者ならではです。
また、この人は自他共に認めるすごい食いしん坊だったらしく、食べ物の描写が
上手でそこも魅力です。美男の主人公がレストランで恋人の美少年のためにあつらえたメニューが
「鶏の清肉汁(コンソメ)と冷肉(コオルドビーフ)にちさのサラドゥ、
乾葡萄入りの温かいプディングに、果物と珈琲」・・・何でもないようで、すごく美味しそうでしょう?
美しい表現おすすめ度
★★★★☆
森茉莉自身の美に対する感性に、とにかく感心してしまいます。
そして、なんといっても魅力的なのは登場人物です。
知らない間に恋人以外の危険な男に魅かれる少年、愛しい人を他人に獲られてしまう前に自ら命を絶つ男、などなど・・・。
独特な雰囲気を是非味わってください。
何と!
おすすめ度 ★★★★☆
随分とアンニュイかつお耽美な小説ですこと、薔薇を齧っているような気分になってしまいますわ……どのようなお方が斯くの如き文章を綴っていらっしゃるのかしらん。と思って、森茉莉お姉さまの事を調べましたところ、何と森鴎外(旧字体の鴎が表示できなかった、無念)の御令嬢でございました。吃驚仰天☆