内容は星5つなのだが日本語版に注文ありおすすめ度
★★★★☆
~いい本ですね。写真もいいし、内容もいいし。パティ・スミスのあの気さくで誠実な人格も伝わってくるし。それになによりタイトルどおり、彼女の完全版としてファンにはオススメでしょう。
しか~し、わたしはこの日本版の本作りについて言いたいことがある。
まず訳詩。これはもうちょっとがんばってほしいと思う。たとえば「People Have the~~ Power」のpeopleを「人民」と訳したい考えは分からないでもないけど、そこまで意味を限定しなくてもいいのでは? 「ひとびと」で十分でしょう。というか、人間が生得的にもっている根源の力とかマンパワー的な意味までがこもっていると思うので、むしろ「ひと」でもいいくらいだと私は思う。おなじように疑問を感じるところがいろいろあった。
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それから編集。やはりこれだけ豪華な造本なら、もっと文章を詰めて、歌詞は原文も載せるべきだと思う。たいした手間じゃないでしょう。それに、構成が分かりづらいところもマイナス。お金のかかっているわりには作りが安い。パンフの寄せ集めみたいな本になっているのはもったいないと思う。編集の意識が、内容とパティさんの高貴さと、大きな書籍の立派さに~~付いて行けてない印象があって、つりあっていないような気がする。~
パティをあじわうおすすめ度
★★★★★
パティ・スミスの詩集として楽しんでもいいと思うし、歌詞カードのかわりにもなる。僕自身そんなふうに読むこともあるが、それ以上に“パティをあじわう”本。自分がこの本を楽しむ方法を表現するとこんな感じだろう。CDを聴く、ライブを体験する、それらと同格でもう一個追加されたのが「パティ・スミス 完全版」を読む楽しみだ。
ファーストアルバム「Horses」から最新作「Gung Ho」までの全訳詞を軸に構成されている。歌詞カードのように「聞き取り不能」なんてのはないし、訳詞ではなく訳詩なのがいいところ。装丁など原書の味わいはそのままといってよいが、原文歌詞は含まれない。できれば、原書も手に入れることをおすすめする。(ハードカバー/ペーパーバックがある。ハードカバー版には最新アルバム「Gung Ho」が含まれていないことに注意)
アルバムや一部の曲については、パティのエッセイが添えられている。このおかげで、Kimberly や Redondo Beach, Grateful といった曲は今まで以上のお気に入りになった。
そして、数多く含まれる写真がいい。ジャケ写、ステージショット、ファミリーショット、スナップ、スケッチその他さまざまだが、写真集としても秀逸だと思う。「Dream of Life」~「Gone Again」の部分は特に感動的で、涙をこらえきれないときすらある。
CD・ライブ・本を同じように楽しんでいる、と最初に書いた。だけどそのうちの一つの楽しみだけでは完結することはなく、全部体験したくなってしまう。なので最後に一言。「来日ツアーしてください」