夏至 特別版 [DVD]
トラン・アン・ユン監督のこれまでの作品の中で一番好きな作品です。これまでもその独特の映像作りに定評のあった監督ですが、こんなに美しく時間と空間をうまく切り取った映像を見たのは初めてです。思わずベトナムに住みたくなったほどです。洗濯したり、料理をしたり洗い物をしたり、といったごく普通の家庭における女性の作業が、とても心を癒される、一つの贅沢な時間の過ごし方に見えてしまう演出と映像の美しさは特筆に値します。3人姉妹の女優陣の好き嫌いは分かれるところでしょうが、その上品で優雅なたたずまいは最近の日本ではなかなか見られないだけに、思わず見入ってしまいました。映画を見ている間、とにかくこんな時間と空間にずっと浸っていたい、と思わせるような贅沢なアジア的癒しのひとときでした。
COLORS
ひさびさに「ザバダックらしさ」が前面に出たアルバムである。力強いリズムと野趣あふれるメロディ、たくましい地を這うようなヴォーカルもさすがといったところ。冒頭曲「僕のビー玉」は初期のテクノっぽいイメージを引きずりながらも小峰公子のヴォーカルによってたちまち物語世界に。この色彩の移り変わりはまさしくザバダックだ。不思議なちょっとコワイ感じのする歌詞も冴えている。2曲目ののスケール大きな飛翔感もザバダックの得意な感じだ。他にもインスト曲「BIRD'S ISLAND」、五音音階的跳躍を用いた「星ぬ浜」、9分を越えるエスニックな「天使の匂い」、また五音音階系の「夏至南風」(サビは違う・・・)とこのあたりの連続する構成感も見事。また「夜明けまで」は特に吉良フアンにはたまらない曲だろう。アルバムタイトルともなっている「COLORS」は大規模なトリビュート・サラブレイト・ソングとでも言えばいいのだろうか。やや色違いに明るい色調のメロメロ系だが、まっすぐに聴けば感動するだろう。そして終曲「OYASUMI」でもとの世界に戻って行くかのように全曲を終える。個人的にはかなり好きなアルバムである。
夏至祭 (長野まゆみEarly Works―少年万華鏡)
「野ばら」に出てきた銀色と黒蜜糖、月彦の「野ばら」とは違った物語・・・
コップを洋杯と書くなどいつもはカタカナで書かれる言葉を漢字で書くことによって話にあった古い感じがでています。また、今では余り見ることがない文字(旧字体、ゐ、ゑ等)が使ってあることによりいつもの見慣れている日本語が不思議と新鮮さがましより幻想的効果を持ってきています。
一場面一場面がまさに絵として浮かびあってくるような言葉の美しさがあります。
そして、同じ本に収録されている多数の短編は他の作品とのつながりがあるものも多いので、他にどのような作品があるのかを知るめやすとしても使えます。
話自体とは関係ありませんが、表紙裏には作者の手書きの文字印刷されています。とても綺麗な字なので凄くよい効果となっています。
initial イニシャル ~岩井俊二初期作品集~ [DVD]
本作は8作品が収録されている。1991年〜1994年のTVドラマなので、ヘアスタイルや着ているものはバブル崩壊頃の雰囲気抜群だし、つい最近発売されたのに画質面でのレストアがされておらず、いい状態だとはいえない。パッケージが豪勢なのはよいが、肝心の絵についても究極を目指してほしかった。決して安い買い物じゃないしね。ともあれ、これらの作品では岩井俊二の原点を知ることができる。1991年は本当に映像作家・岩井俊二デビューの年であり「見知らぬわが子」は面白かったが、まだまだ未成熟。続く1992・93年ころの作品も「夏至物語」のような今の岩井ワールドに通じるような作品もあるが、全体的には「普通」である。要はこの時点ではまだ岩井俊二「らしさ」の片鱗しか観ることができない。しかし、最後の「ルナティック・ラブ」は違う。他のがTVらしいチープ感満載であったのに対して、これだけが「カツドウ」なのだ。主役が豊川だからではない。作り方が「映画」になっているのである。初めて岩井作品に触れる人も「アレッ」と思うはずだ。それはその通りで、実は前年に名作「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」を作り上げているからであり、本当ならばこれも本作に入れなければならない。だから「ルナティック」はレベルが違うのだ。おまけにこれは篠田昇×REMEDIOSという大黄金トリオでの第1作であり、まさしく映像力が他作品と段違い。でもこの1作品のみで本作を勧めるには高いし、また「ルナティック」は他のDVDにも収録されているので、そちらでも良いかもしれない。岩井ファンにとっては必須のコレクターズアイテムだが、少しマニア向けかもしれない。