The Shipping News
ニューファンドランドというところは、海と風と岩、冬は氷ばかりの、とにかく自然の厳しいところらしい。そしてそこで生きている人々にも厳しい現実と歴史がある。ミステリーのように徐々に明らかにされる主人公クオイルの一族のおぞましい歴史は、日本なら「犬神家の一族」といったところか。
でも筋の面白さより、何といっても文章がすごい。海のにおい、風の冷たさ、潮風のべたつき、湿気のこもった船室のなかにいる人間の髪におい、海水の冷たさ、吹き付ける風の音、料理の味、子どもの声、水死体のふやけ具合(!)・・・そういうものが読むたびに押し寄せてきて圧倒される。
心から口惜しいのは、英語が難しいうえに船の部分の名称がたくさん出てきて、私にはとうてい全部は理解できなかったことです。
Gentle Giants: A Book of Newfoundlands
トゥルーへの手紙(A Letter to True '05)で、ウェーバー=犬というイメージが定着した感が強いが、ウェーバーほど犬をこよなく愛し、撮り続けている写真家も珍しい。過去のPhotograph Collection and Movieには必ずといってもいいほど犬たちが登場して来ました。MaleNudeと同様に、ウェーバーにとって犬たちは大切なテーマの源となっています。写真集"Bear Pond"を始め、チェット・ベーカーのMovie"Let's Get Lost"までにも、やはり犬たちは登場します。本書ジェントル・ジャイアンツ(Gentle Giants '95)は、ウェーバーの愛情満ち溢れた、まさに犬たち(今回のテーマ、ニューファンランド犬)の集大成作品集と言えます。犬たちを単なる被写体として捉えてるのではなく、そこには飼い主の愛情にも類似(匹敵)するスタンスと、その視線で捉える優しい温もりを感じ取ることができます。それにしても犬だけの題材(素材)で、これだけのストーリー構築とページ構成の展開には本当に脱帽させられます。BookDesignのArtDirectorデミトリアス・レヴァンスとウェーバーとのコラボレーションは、この"Gentle Giants"を始め、現在に至るまでの書籍に対する生理的なアプローチを実に上手く導いてくれています。本来のあるべき姿を明確に表現し、時代(写真集)をリードするそのセンスは揺るぎないものです。そして犬たちの可愛らしさはもとより、ウェーバーの編集感覚の素晴らしさをドラマティックに堪能できる1冊です。