ピンクのカーテン [DVD]
美保純さんの貴重な日活時代の名作で、代表作の1本です。日活アイドル路線の中で、純ちゃんにも随分影響を受けました。原悦子さんがいなくなって以来ですから...。純ちゃんの日活出演は、このシリーズを含め僅か9本です。今では、ロマンポルノもDVDや videoでしか見られなくなってしまいました。純ちゃんの映画も性描写を除けば、一般映画と同じで充分満足いく作品ばかりです。シリーズ2.3も早めのDVD化を望みます。劇場のスクリーンが恋しいです。
銭ゲバ 上 (幻冬舎文庫 し 20-4)
この作品によって、マンガは一流の文学と肩を並べるようになったと言っていいのではないだろうか。
文学と言える作品と言えば、その前に手塚治虫がいたじゃないかと言われそうだけれど、人間の怨念と言えるほどのものをマンガに書き込んだという点で、この作品は、マンガというものの一つの到達点を示したと言っていいのではないだろうか。これほどまでの作品を、僕は今もって知らない。
当時、僕は小学生。親はギャンブルに明け暮れ、二三千円の学校の集金すら払えなかった。 そんな僕が読んだ、「5円のお金が無いうちもあるのです。」という作中の母の言葉と姿は、35年ほど経った今も鮮明に記憶に焼きついている。読みながら、僕は、「僕の理解者がここにいる。」と思ったものだった。そして、主人公の破滅する姿に、自分を重ねて悲しんでいた。
そんな力を持つマンガが、今、どこにあろう。優れた作品が沢山あることは認めるが、これほどの迫力を持ち、美しくないドラマを、決して衒(てら)うわけでもなく、あざとさを狙うわけでもなく、敢然と描いてみせる作品が。
幸せな家庭を築いた今も、我が家のクローゼットにはこのマンガがある。
ホンモノの悲しみが、このマンガにはある。
歌謡曲番外地 東宝レコード映画・TV編~銭ゲバ大行進
歌謡曲番外地、映画・TV編であるが、『お尻の歌だもんね!』と同様濃厚な歌の世界が展開される。冒頭〜3曲目までは浜口庫之助作曲作品が並ぶ。唐十郎が歌う「銭ゲバ大行進」「銭ズラよ!」は映画『銭ゲバ』の主題歌。一方でパワー全開、方や心の底からこみ上げる怨念のような両極が火花を散らす歌の世界は絶妙のバランス。
鹿島とも子の歌う「愛ふたたび」「走れニコ」も素晴らしい歌唱で文句なし。特に途中からフランス語で歌われる後者はエレガント。大矢茂の隠れた名曲「アダムとイヴのように」は、加山雄三「君といつまでも」を彷彿とさせる。水原ゆう紀+トゥエルブ「ぼくらの名は青春」「思い出」はほんわかとした雰囲気のさわやかな青春歌。
それにしても映画『巨人軍物語 進め!栄光へ』の主題歌までも入っている。まさに歌の一大エンターテイメントのようである。ただどうせ本郷直樹を入れるなら、傑作ハードボイルド・アクションドラマ『白い牙』の主題歌も入れてほしかった。
とにかくどれもこれも、どこから聴いてもこの作品群の素晴らしさを充分堪能できる、そんな奇跡のようなアルバムである。
浮浪雲 93 (ビッグ コミックス)
今より振り返って四半世紀前、学部学生の控室に『浮浪雲』が第1巻から揃っていました。
初期の絵柄で鮮明に記憶に残っているのは、宿場町中の野郎たちが、浮浪雲とともに一斉に群れをなして抵抗する図です。
幕末の時代を舞台にして、実在の人物も何人か使いながら、本筋は、歴史全体ではなく、歴史の中の人間の心情の側にバイアスを置きました。
本巻最終話「長者豆腐」は、笑いの回復、のテーマです。ご一読ください。
アシュラ (下) (幻冬舎文庫 (し-20-3))
上巻のレビューにも書いたが「アシュラ」は、約10年ごとに再刊されていて、ヤフオクを探せば容易に手に入る。 今回の版は文庫なので迫力にかける。80年代に出版された日本文芸社版を底本にしてあるようだが、この本は、40ページほど削られている部分がある。90年代に刊行されたぱる出版版は、カットされている部分も収録された完全版でハードカバー版なので、保存用としては、こちらの方が適している。完結編は週刊ジャンプに81年に読み切りで掲載された。
この「アシュラ完結編」は2009年7月ごろ、「銭ゲバの娘プーコ アシュラ完結編」(青林工藝舎)に収録され刊行された。
奇跡の出版と言ってもいいだろう。
アシュラが、その後、どうなったのかは、この本を読んで確認していただきたい。
連載されたのは、少年サンデーではなく、少年マガジンである。 サンデーに連載されたのは、テレビドラマにもなった「銭ゲバ」のほうである。 「アシュラ」は「銭ゲバ」の先にある作品であり、さらにその先には、全ての欲望を捨て去った初期「浮浪雲」の世界がある。