長い道 (Action comics)
しあわせ芝居をしながら不仕合わせに安堵する。黙々として、気持を総括することを恐れる道の在りようは、飄々と浮世離れしたキャラクターに拍車を掛けていく。微笑いながら「人類最後の日かと思いましたよ」と天然に言わせてしまう。あさっての方向を見るような彼女の心は歯を食いしばるように自らの内省を封じていったのではないか? ふとそんな気がします。過去が自分(道)を縛るように竹林どのが幸せを躊躇うことが若しあれば……その気がかりが自らの結婚の報告で贖われる気がしたのではないか。とすれば本末転倒の結婚になる。道に罪の意識があるとすれば共犯者にしてしまった荘介どのに対してだろう。互いにとって都合の良い場所に収まることができればよかったはずの結婚。夫を裏切り続ける妻は優しさをはぐらかし嘘をつく。
「水鏡」という話の中で「やっぱり荘介どのは右利きのほうが落ち着きますね」と道は呟く。道には素直な本心なのだろう。ちゃらんぽらんな甲斐性無しの荘介の温かい本質に触れるたびに感じる痛みは否応なしに道を癒してもいく。そしてそれがまた苦しい。竹林どのとの再会を道が願ったことも荘介を裏切り続ける辛さからだったと私には思える。「わたしもシアワセになってもいいのですよね?」という道の言葉には一抹の寂寥もあったろうが、荘介との時間を真実に変えていける安堵と解放に満ちている。結婚したことを報せる竹林どのからの葉書を受け取った日、帰宅した荘介が道に言う。「なんかいいことでもあったのか? わかるよ。もう長いつき合いなんだから」しばらくの沈黙の後「ええ ありましたよ」と道は答えます。その「いいこと」って? 竹林どののこと? 違うでしょう。黙っていても自分の気持の変化に気づいてくれる。そういう荘介の優しさのことを「ええ ありましたよ」って道は言っているんですね。 その後またしてもオチがつくのですが…(笑)
テレビ時代劇主題歌コレクション
ついに、橋幸夫の歌う「伝七捕物帳」第1シリーズの主題歌「向こう通るは」と「江戸の花」の両方が収録されたCDが出ましたねー。これを待ってたんですよ。
このCDの収録内容について簡単にふれると、まず、収録曲すべてが歌です。インストはありません。そして、発売元がキングなので、当然キング音源からの収録が中心なんですけど、RCA(大江戸捜査網)、ビクター(伝七捕物帳)、東芝(座頭市物語)、ワーナー(痛快!河内山宗俊)、ポリドール(おしどり右京捕物車)などの音源からも収録されています。そのおかげで伝七主題歌もキング音源じゃないのに聴くことができるわけです。
まあ、個人的な希望を言えば、角川博が歌う「伝七捕物帳」第2シリーズの主題歌「伝七流し唄」も収録されていれば、もっと良かったんですけど。
時速15キロの旅―もっとスローに!ヨーロッパ自転車道中記
南ドイツとオーストリアはザルツカンマーグートのよく整備された自転車道路をゆっくりたどる熟年夫婦の自転車旅。毎年1回ずつ3年にわたる経験。ずっと前にドイツをめぐった時に、バスの窓から見た親子連れのサイクリストが輝いて見え、うらやましかったが、今度は、この本のご夫婦がとてもうらやましく思えた。私も同世代だが、体力的に問題がなかったというところが最大の驚き。
風景は、ドイツもオーストリアも確かに美しいけれど、その半分は目新しさ。私は、風景は日本とて負けず劣らず美しいところが多い、と思う。しかし、日本と違うのは、とてつもなく良く整備された自転車専用道路、そしてホテルや電車や人々の、サイクリングを受け入れる素地。これらは、日本が背伸びしても届かない、ほとんど文化の違い。改めて驚かざるを得ない。
この本、ほとんど日誌。あったことを淡々と描く。一日の走行キロ数、見どころ、泊まったホテルの値段、展望台や教会など訪れた施設とその特徴、スーパーで買ったソーセージ、ドイツパン、ワインなどをパジャマ姿でくつろいで食す夕飯、・・・。風景に綺麗だと感激しても、どのように綺麗なのかはあまり具体的には描かない。何よりも経験と情報を伝えてくれる叙述。写真はない。ガイドブックの紹介も詳しい。これらを参考にみなさんも是非やってみて下さいと訴えていて、結構その気にさせられる。
読むだけで人生が変わるたった一つの方法―伊勢白山道Q&A事典 (リュウ・ブックス アステ新書)
伊勢白山道リーマン本はほとんど読んでいますが、これが一番良いですね。
これだけのボリュームでこの値段は、出版物としても驚きのお値打ち価格だと思います。
そして、情報の質も最高。
楽しく読んでいるのに、なっかなか、読みきれないです。
私の場合、スピリチュアル好きが高じて見つけた伊勢白山道リーマンさんでしたが、今は日常生活の役に立たない情報なら要らないなという感じです。
りーまんさんは卒業したよっていう方でも、一冊、手元に置くと便利だと思いますよ。
ルーシェで根気良く検索する手間も省けます。
とは言え、ルーシェも好きで、まだ、使っていますが(^−^;
江戸をんなの春画本-艶と笑の夫婦指南 (平凡社新書)
そもそも、
女性も春画を見て、楽しんでいた、
それがよくわかる本だ。
とりあげられている図版は、
月岡雪鼎のものだが、
これがなんともいい。
とくに、
カラ―肉筆画「四季画巻」の、
女が、春、夏、秋、冬と、
徐々に歳をとっていき、
それとともに大胆になるのは、
著者に指摘されて、わかった。
過激な図版もあるが、
なかなか和める。