グリズリー (徳間文庫)
理想的な世界を実現するため、アメリカを相手に国際テロを企てるグリズリーこと折井と、彼を追う公安の清宮、元SATの城戸口を描いた国際謀略小説。グリズリーはアメリカが「核兵器技術」を背景に世界を支配していると考え、自分の理念のため、テロのソフトターゲットとして日本留学中の副大統領の娘にターゲットを絞るが・・・。
本作品はとても長い作品であるが、グリズリーのテロの目的とその手段がなかなか明らかにならず、中盤以降まで冗長な印象を受けた。後半は、グリズリーとアメリカ政府の戦いが迫力を持って描かれているだけに残念である。読者が最初の部分を我慢できるか否かで評価が分かれるかもしれない。私は、正直読み進めるのに苦労した。また、グリズリーを追うもの、あるいは副大統領の娘など、人物設定はうまくできているのだが、それぞれに関する書き込みが「太平洋の薔薇」と比べると浅い。余計なことを書きすぎて、結局書きたいことがおぼろげになってしまった印象すら受けた。
☆3つは厳しめの評価だが、「太平洋の薔薇」と比べると、この程度が妥当かと思う。未読の方がいたら、まずは「太平洋の薔薇」をおすすめしたい。