剣聖―乱世に生きた五人の兵法者 (新潮文庫)
上泉伊勢守等5編が納められている。それぞれ生涯を描いた作品ではないので人物評が不明なところはやむを得ぬがそれぞれの兵法への取り組みが良くわかる。特に上泉伊勢守は大変おもしろい。また佐々木小次郎が宮本武蔵との対決時69歳であっとは初めてしりました。歴史小説161作品目の感想。2008/10/12
いい音 いい音楽 (中公文庫)
著者の長年に亘るオーディの体験に裏打ちされた、感性主体のオーデォ論。歯切れのよい評価は、読んでいてもえせ評論の多い中で小気味良い快感を感じる。また、体験による部分が多いため、時代を経ても現在でも使える部分がある。再度、良い音とオーディオを考えるきっかけになる。
五味康祐オーディオ巡礼 (SS選書)
五味康祐といえば無頼で鳴らした著名昭和作家の一人ですが、オーディオ愛好家としてもつとに有名でした。
その独断と偏見(?)に満ちた論評には賛否両論が沸いたものですが、当時やや否定的に捉えていた小生がジックリ読み返してみても、腹の据わった評論であることがよく分かります。
つまりは「何者にも媚びへつらっていない」ことが十分に伝わってくるのです。
私人としての著者の芸術的感性を十分感じ取ることが出来る名著であると思います。
柳生武芸帳〈上〉 (文春文庫)
セリフは文語調、複雑な人物相関図、ストーリーもいいところで暗転しまくる上巻。
上巻は相関図をメモしたり居合の用語を調べながら、最後まで読むべきか、
現代小説に慣れ親しんでいるナンパなわたしは悩みました。
* * *
下巻の前半でやっと慣れ、面白くなってきました。
軟弱現代人にはイタいところですが、かつての日本のよき精神としての、武士道、信・偽。。
全ての人の行動・人生において精神のありかたを問われているような
Take it easyに侵される前のストイックな美学に貫かれています。
武芸帳を発端に禁中・殿中の関係のなか天下平定のために暗躍する柳生の真意とは。
攻略のために研究行動する日本、一方、危機を迎えてからこそ緻密に敵を探る中国。
朝鮮・中国とのスパイものへ急発展か?いったい柳生はどう関わっているのか?
じゃあ謎多きあの人はいったい?あの人たちは何でしつこくあちこち登場したの?
といった雰囲気で未完に終わってしまいます。
そこがドラマ・映画で多様に展開できるしかけになりました。
武芸帳の謎で、多少の無理もあれ、
これだけ広範囲に深く広く展開しているものはないでしょう。
柳生もののみならず、時代小説の発展に多く寄与した作品というのもうなずけます。
最初の三つ星を撤回し、構成難解・未完の分僭越ながら恐る恐る−1とさせていただきます。
残った★は読者の想像力で楽しみましょう。