からん(7) <完> (アフタヌーンKC)
かつてアフタヌーンという月刊誌はかなりマニアが好きそうな、大人向けの漫画雑誌として発行されていた。私は何故か創刊当初から(当時私は小学生なの に・・・)ずっと読んでいた。その中で木村紺さんの作品は「神戸在住」が連載された当時、不思議な漫画だなあという印象はあったものの正直私の中ではあまり注目していなかった(とういうか、その価値に気付いていなかった)。
そんな中久しぶりに書店で見かけた作者の新刊が「からん」だった。これまで「神戸在住」のような叙情詩的な描写によって様々な人間模様を繊細に紡ぎ出していく作者の手法、また「巨娘」にみられるようなコメディの手法など計算された面白さは健在であり、柔道というスポーツを通してそれを取り巻く主人公達の心の動きを読む度に、ああこの作者の人間描写はスゴイ!と唸ったものである。
今回7巻にして終了とのことだが、これまで1巻から張られていた伏線(数々の謎?)は結局分からないまま、これから盛り上がっていこうとする途中で終了してしまった。内容としては京など各々のキャラクターが少しずつ互いに歩み寄り、近づいていく、人間としての成長を伺わせるようなイベントが盛り込まれ非常にすばらしい内容となっている。最後の書き下ろしとした穂積のエピソードにしても、我々現実社会における問題をそのまま飾らずえぐり、しかしそれに対してどうあるべきかという作者の姿勢を垣間見た気がする。
ただ、今回の途中終了の件については「アフタヌーン」という雑誌全体の雰囲気が、この作品の作風に合わないことが理由の一つではないだろうか?以前「よしえサン」という作品が連載されて終了した時、単行本の最後で作者が「雑誌の雰囲気と合わない」といったことを一つの理由にしていた。オタク系漫画が表現方法として決して悪いというのではなく、その雰囲気自体がなじめなかったのではないだろうか(「地雷震」、「勇午」なども然り)。
「からん」の今後の展開については多くの人が期待しているところであり、続編が強く望まれる。しかし柔道というスポーツのジャンルで長く読ませるにはそれなりに準備も必要だろうし、それぞれのキャラの成長など様々な構成を考えなければいけない作者は・・・大変だと思います。でも読者は待っています。私も首を長くして待ってます。
巨娘(2) (アフタヌーンKC)
ものすごく手間をかけて書いてあるのはわかるんですが。
残念ながら面白くないです。からんはあんなにおもしろかったのに、打ちきりになったそうだし。アフタヌーンの編集の人の気が知れません。
神戸在住(2) (アフタヌーンKC)
主人公辰木桂とそれを取り巻く人々の日常を描いている。
特に、学校での様子は思わず自分の学生生活を思い出させるかもしれない。
また、作品内では何冊かの小説が登場するが、
それらを実際呼んでみるのも、おもしろい。
巨娘(1) (アフタヌーンKC)
アフタヌーンは創刊号から購読していますが、「神戸在住」はほのぼの過ぎて
性に合わなかったので全然読んでませんでした。ですがこの「巨娘」を読んだ時は
それまでの作者に対してのイメージが一気に塗り替えられて、それからは毎月
楽しみに読んでました。
主人公の「ジョーさん」は身長181cmのスタイル抜群な巨娘。焼き鳥居酒屋の
支店長にして優れた経営センスと無敵の破壊力を誇り、仕事に生活に欲望に、徹底的に
手抜きなく削岩機のように全てをこなし、ダメな仕事や人間など目障りなモノあらば
眼力で畏怖させ腕力で叩き伏し脚力で薙ぎ払い、そして仕事の後は大ジョッキ片手に
ヒロインで年上の美樹ちゃん(♂)をクマが人形を愛でるかのように折って畳んで
ひっくり返して味わい、舐りまくってます。
どんなダメダメな部下であっても、一度でも面倒を見る事が決まれば、どんなことが
あろうがあっさり見捨てて放任するような生優しいことはしません。
自宅に引き篭もって仕事から逃げようものなら、速攻で押し掛けて玄関のドアを
蹴破って首根っこ鷲掴んで引きずり出し、鉄拳指導にて生きる事の厳しさをみっちり
叩き込む。そして努力の跡が見えれば、たまにはさりげなくフォローもする人情も。
スジモンの脅し文句にも微動だにせず逆に怯えさせるほどの肝の据わりと、店を
任された者としての責任感の強さから、社長や同僚や部下から絶大な信頼と尊敬を
受け人望もぶ厚く、他人の助けなど一生涯無用な常に豪快に我が(王)道を突き進む
スーパー主人公の姿を読んでいると、「自分もこんなふうにゴリゴリ生きてみたい!」
と素直に思えました。
そのほかにも司法免許に楽々合格し、4桁の暗算を同時に幾つも瞬時に弾き出すほどの
天才的な頭脳を持ちながら、常に肉体的強者を求め、最大の目標=ジョーさんを倒す機会を
虎視眈々と窺う、出刃包丁使いで仕事の出来る優秀な片腕のトオル(♀)、普段は仕事のできる
おしとやかで可憐な淑女ながら、自らが惚れた男性にちょっかいを出す輩には紅蓮の殺意を
もって威嚇し戦慄させるサチさん、あとどうにも使えないポン子など超個性的で面白い
サブキャラも大勢居て、さらにはアンダーグラウンドでヤバイ世界などの描写もあり、とても
広く奥深い知識が得られますww
この本は特に職場のグダグダな後輩や部下の扱いに悩んでおられる方々にぜひオススメです。
腐りきった人間に丁寧に根気よく教えてあげるなんてのはまさしく愚の骨頂!これ読んで
ジョーさんを見習って、些細構わずムカつく点があれば間髪いれず思いっきりブッコロして
そのだらけた身体に礼儀と常識を徹底的に叩き込んでやりましょう。
そして良い仕事が出来るようになったら、さりげなくフォローしてやってあげましょう。
神戸在住(4) (アフタヌーンKC)
一話、一話読める描き方が魅力的だと思います。
この四巻に来て、さらに登場人物などの詳細などがわかってきます。
主人公の昔話、友人の仕事、学校での出来事などなど。
その一話、一話に感じさせる何かが眠っています。
他愛もない日常生活、友人とのお喋りなどが自分の心に入り込んできます。
入り込んだその何かが、自分を優しくさせたりと心から主人公の気持ちに近づいていく感じがします。
勘違いかもしれませんが、少なくともこの「神戸在住」を読んでいる間は優しい気持ちになっていきます。
ちょっと、今流行りの癒し系(?)に近いかも・・・
一度騙されたと思って読んでみてはいかがでしょうか?