日本海大海戦 [DVD]
後の東映作品「海ゆかば」より断然良い。円谷特撮も素晴らしい。陸軍=長州の「二百三高地」と全く反対の立場(海軍=薩摩)の視点から作られているのが面白い(こちらの作品が先です)吉村昭著「海の史劇」司馬遼太郎著「坂の上の雲」等の小説等と組み合わせるとより理解り易いと思います。
女子高生=山本五十六リローデッド3 (あくしずレーベル)
「やりすぎ&なんでもあり」なシリーズ通巻5冊目。
史実とは様相を異にするMI作戦が実行されますが、それは壮大な釣りに過ぎず本当の目的は時間稼ぎ。
さて、冬の北海道はどうなるのだろうか。
巨大オンラインゲームが舞台装置のこの作品、他のシリーズがハード路線なのに対して、悪ノリが最高(笑)
旬なネタはそのうち「ああ、あの頃はこれが流行っていたっけ」と思うでしょう。
「中の人」とゲーム参加中の国籍は一致しないので、「あの国がこの戦術を使うとこうなる」や「あの国
なんだけどノリが違う」などニヤニヤ。当時の技術力の限界は超えているにしても、太平洋の戦いで
こんな事が出来るという着眼点は素晴らしい。メコンデルタと化した南洋の島、立てこもる事に関しては
随一の「中の人」があくなき抵抗戦を続けたフィリピン、そして海上殲滅戦。ジェネラルサポートがゲーム化
しないかな、これ。
一方で「順調に腐った」米国才女コンビや、「かつて腐っていた」日本の才女、「現在進行形でオタ道邁進中」の
政府高官、「やらせてみたら堂に入っている」主人公、実に平和だ。
どうしても扶桑を出したいのか(笑)
海の史劇 (新潮文庫)
日露戦争開戦から日本海海戦までをバルチック艦隊の極東遠征を軸に描く戦史記録的小説である。艦隊司令長官ロジェストヴィンスキー提督が途方もない不安と苦労の中で艦隊を指揮して前代未聞の大遠征を成し遂げたかを丁寧に描いている。世渡り上手で出世した典型的宮廷軍人で無能の人と描かれた「坂の上の雲」とはまるで別人である。有視界戦闘しかできなかった当時、勿論電子の目などあろうはずがなく、霧や暗闇に神経をすり減らし、UP TO DATEで正確な情報を手に入れることができずに偽情報や誤情報に混乱し、時には間違いを起こしながらもそれでも大艦隊を日本近海まで率いてきた手腕を正当に評価している点はいささか感情的な「坂の上の雲」よりは大人の対応であろう。一方で「坂の上の雲」と同じなのは、乃木率いる第三軍司令部の無能さである。ここは本書でも辛辣な表現であるが、やはり近代戦の何たるかを理解していなかった乃木将軍、伊地知参謀長は軍人の反面教師として長く記憶されるべきだろう。もっとも、太平洋戦争の日本陸海軍将校たちの多くは、第三軍司令部と変わることのない無能さをさらけ出しており、日本軍には敵や置かれた状況を客観的正確さを持って評価しようとしない、或いは自分たちにとって都合の悪いことは目をつぶるという悪癖は連綿と持っていたと思わざるをえない。
勝った戦争として戦意昂揚的な内容に終始しがちな日露戦争ものの中で、冷静かつ客観的視点で描かれた戦記として読みごたえのある作品である。非常に楽観的な民族論の上に立つ「坂の上の雲」を読んで日本民族は優秀なのだと浮かれている人はこういう小説を読むべきだと思う。
明治天皇と日露大戦争 [DVD]
日露戦争全体に焦点を当てているために、「二百三高地」や「海ゆかば」に比べると戦闘シーンそのものは薄くなっています。しかしながら、明治天皇をはじめとする当時の戦争指導者の指揮統率の苦悩が繊細に描かれており、明治時代のリーダーシップ、とりわけ天皇、政府高官、国民との関係がよく表現された、素晴らしい映画でした。
坂の上の雲 5つの疑問
「坂の上の雲」に便乗して何点かの日露戦争関連本が出た2011年でしたが、おそらく本書はその数少ない収穫です。
基本的には小説「坂の上の雲」に記述された日露戦争の記述についての「疑問」を検証するというスタイルですが、むしろ小説とは無関係に「旅順の早期陥落はあるのか」「日本海海戦における丁字戦法の是非」「奉天会戦における日本軍の作戦構想は中央突破か包囲か」等いった古典的な論争に一石を投じる内容となっており、小説については「定説」を紹介するために使用されていると見た方がよいでしょう。
内容に関しては各項いずれも力作というべき内容ですが、陸戦関係の多くの項を担当している長南氏の論考が特に光る内容です。
一次資料の紹介とともに、最近の出版物にも目配せが行き届いており、記述もバランスのとれたものとなっているように思います。その主張を肯定するのであれ否定するのであれ、真面目に読みこめば多くのものが得られる内容でしょう。
並木書房からの日露戦争本は「坂の上の雲ではわからない〜」シリーズなど、あまり良い内容のものがなかったのですが、本書は出色の出来であり、日露戦争に対してある程度の知識と興味をもっている人は一読することをお勧め出来る内容となっています。
欠点としては、全体に日露戦争(あるは「坂の上の雲」)全体像を概観する記述がなく「知っている人向け」あり、ライトな装丁にもかかわらず、初学の人には難しいと思われること、コラムなどが充実している反面、やや読みづらいレイアウトになっていることがあげられると思います。またタイトルの制約のためか、項によっては、まとめに多少の苦しさを感じる部分もあり☆4つとしていますが、気にならない人にとっては、この点は大した瑕疵ではなく☆5つとしてもよいと思います。