負けんとき〈上巻〉―ヴォーリズ満喜子の種まく日々
上下巻とも拝読しましたが、著者の想像に依拠しているのではと感じられる部分が多く、とくに直接話法で語られる重要人物の心の動きには違和感を覚えました。たいへんな労作とは思いますが、終始その違和感が離れず当惑を覚えました。当時の人物像に取材したフィクションと思って読めば楽しめるかもしれません・・・・。
鼠―鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)
昨年のライブドア社長逮捕劇をみて真っ先に思い出したのが
本書の金子直吉であります。
会社を大きくするために踏まねばならない地雷は星の数ほどありましょう。
急成長を遂げたものに対する嫉妬もまた、膨れ続けることでしょう。
夢バブルの成長と瓦解。我々は歴史から何を学んでいるのでしょう。
生きることの意味に答えを見出すことは、かくも難しい、と言わざるを得ません。
お家さん〈上〉 (新潮文庫)
すばらしい本でした。ノンフィクションとは言えないのでしょうが大変良く纏まっていて史実にも合ってますよね。「鈴木商店」という会社名すら知らなかったのですが読んでいくうちに唖然とするような「総合力」「結束力」を武器に明治・大正・昭和にかけて君臨した商社だったということが分かり感動した。登場人物全てが魅力のある人間ばかりで大河ドラマでTV放映したほうが今の「江」なんかより余程視聴率が上がるのではと思いましたし、作家自体の力の差が歴然としていますね。
神戸は以前出張で何回も訪れていた地ですし、台湾も昨春行って中国とは違う礼儀正しい国民性に認識を新たにしたところでしたので、再度それぞれの地を訪れて歴史に触れてみたいなぁと感じた次第です。良い本でした。
お家さん〈下〉 (新潮文庫)
テレビドラマ関係者の方々へ
この本ほど連続テレビ向けの本は見当たりません 明治 大証 昭和へと続く一民間会社の壮大なるストーリーです
最後に台湾銀行の融資を断ってあえて倒産させたお家さんごりっぱ さわやかさが残ん読書感でした
銀のみち一条〈上巻〉 (新潮文庫)
時代は明治の中ごろから。佐渡金山、石見銀山と並び称される生野銀山(現、兵庫県朝来市生野町)を舞台に、坑夫の雷太と芳野(美人芸妓)、咲耶子(医師の娘)、志真(咲耶子の世話をする女中)をメインキャストに展開される長編恋愛小説。
著者が、NHKラジオで着想の原点を「生野で、一本の美しい簪を見たときに、これを着けていたのはどういう人だったのだろうという思いから構想した。」というようなことを語っていた。たった一個のモノからこれだけの物語を創造できることに感嘆してしまう。
鉱山が舞台ということで「青春の門」に似た空気感があるが、物語自体は全く別物で玉岡ワールドを堪能できる。
田山花袋の「蒲団」からヒントを得たような個所もあるが、ここが違ってくると全く違うストーリーになってしまうので、全体の物語を生かすためにはこのままで良いと思う。
軟弱な恋愛小説には飽きたけど、次に何を読めば良いかと迷っている恋愛小説好きにお勧めしたい佳作。