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アフガン零年

セディク・バルマク
おすすめ度:★★★★★
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最低限の前提知識
おすすめ度 ★★★★★

星5つです。

作品の内容については他のレビュアーの方がたくさん書かれているので、ここではこの映画を観るための最低限の前提知識を書きたいと思います。

タリバン政権下のアフガニスタンでは、女性は多くの権利を制限されていました。
まず、女性だけで外出することを禁じられていました。
また、学校に通うことを禁じられていました。
さらに、仕事に従事することも禁じられていました。
それゆえ戦争などで夫や息子などの男手を失った家族は、収入の道を絶たれ、物乞いになるか飢え死にするしかありませんでした。
このような状況が、映画の冒頭シーンでの
「私たちに仕事を。これは政治活動ではありません。ただ”ひもじい”のです」
という女性たちのデモや、
「この娘が男の子だったなら・・・」
という主人公の母の言葉の背景にはあります。

悲しい映画です。甘い夢や希望を見せてはくれません。
しかし救いがないわけではありません。
それは映画の中ではなく、DVD特典の中に見つけることができます。

ぜひ手にとってみてほしい1本です。



「終わった部分」を「終わった後」に描いている
おすすめ度 ★★★☆☆

 タリバンが支配するアフガニスタンの首都カブール。人々は厳格なイスラムの教えを守って生きることを求められている。女性は外出時には肌を出すことを禁じられ、学問や労働に従事することが許されない。
 しかし男手がないある家庭の少女が髪を切り、少年の扮装をしてオサマという変名でミルク小売商の家で働き始める。彼女はやがて神学校で級友たちから少女ではないかと疑われてしまう…。

 タリバン政権下の女性たちの差別状況を描く映画はこれが初めてではありません。「カンダハール」(2001年)は随分と話題になりましたし、働くために髪を切って少年と偽る少女の映画には「少女の髪どめ」(2001年)があります。
 これら2作品を見た後では「アフガン零年」は既視感が強いというのが率直な感想です。特に「少女の髪どめ」の焼きなおしではないかという思いは否めません。

 さらにいえば、この作品は後出しジャンケンのような後味の悪さが残ります。タリバン政権が崩壊した後に作られただけに、打ち負かした側が打ち負かされた側を思う存分に糾弾できるという利点のもとに製作されたといえます。もちろんタリバン政権下の息の詰まるほどの女性差別のひどさは筆舌に尽くし難いものがあり、非難されてしかるべきものではありますが、当時の社会状況の苛烈さは既に多くのドキュメンタリーやルポルタージュによって私たちのもとに届けられています。

 「カンダハール」と「少女の髪どめ」が「最中」に作られたのに比べると、「アフガン零年」はやはり「終わった」直後に作られたという点で、評価の土俵を同じにはできません。アフガニスタンではタリバンの次にやってきたものがあります。そしてそれは必ずしも手放しで評価できるものではないことをNHKのドキュメンタリーなどで目にしています。映画はその「終わっていない」ものを描くことに勇気と英知を注ぐべきだと思うのです。




タリバンは男根主義
おすすめ度 ★★★★★

呆気にとられるような脚本。映画のではなくタリバンが作る脚本が、です。
タリバンが超禁欲主義であることは概念にありましたが、その考え方は、
「欲を起こさせるようなものを封じ込めよ」
負担は女性にかかってくる。ブルカをかぶって仕事もできず教育も受けられない。
女性は自分の人生を自分で決めることができない。
主人公の少女にいたっては、タリバンが半日で最終決定をしてしまう。

この映画、少年達に夢精処理を授業として教える場面があります。
冗談のような話ですが、いかに男根に意識がいっているかが象徴的です。
救いはタリバンの悪口歌が出来上がっていて、結婚式で女性達が歌うこと。
世界的大ヒットして欲しいぐらい。

主人公の少女は泣いてばかり。無力で哀れです。
流血するようなひどい暴力シーンはないのですが、ニコニコ笑って
花嫁に錠前をプレゼントしようとする夫など、
人の感情を閉じ込めて成り立つ社会の恐ろしさが見える映画です。



うだうだ言わず、つべこべ考えず
おすすめ度 ★★★★☆

あまし難しく考えずに見てみるとよい、ですよ。製作された経緯が大変に興味深いです。

「映画」の定義にこだわる事なく、杓子定規に考えないで、頭をぽわんとゆるめた状態で見てみると、、

ひとつの悲しいお話です。

役者の多くが素人です。主人公の女の子も、監督が道端で出会った物乞いで生計を立てている少女だとか。

お香屋の役で登場する少年も、道で犬をつかまえては売っている普通の少年だそうで。

実際、それほど気乗りしないで見た映画ですけど、なかなか良かったです。ただし、どこにも救いは見当たりませんけど。

「虹」の場面が希望を象徴する場面になるはずだったけど、監督は、そのシーンをカットしたそうです。カットせざるを得なかった。そのあたりのメッセージを思うと、やっぱ暗い気持ちになっちゃいます。

よく人に希望を見出そうとする作品も多いのですが、実際、そんなことないじゃないですか。願望じゃないですか。そういう希望がなく、現実的なラストシーンです。

だから映画に自分好みの娯楽性だけを求める人なら、見ない方がいいのに、、。


子供の悲しむ姿はつらい
おすすめ度 ★★★★★

 マリナにとって、タリバンの存在は悪魔そのものでした。しかし、女だけの外出を禁じた彼らの「掟」を破った瞬間から、マリナはタリバンとの戦いを始めます。つまり、それは自分の心の中の悪魔との戦いです。

 タリバンの追及におびえながら、言いしれぬ恐怖と戦います。ついに神学校で「女」呼ばわりする男の子たちに向かって、意を決して「女じゃない」と叫ぶシーンこそ、マリナが心の壁を突き破り、自分に克った瞬間だと思いました。

 NHKのドキュメンタリー番組で紹介されていましたが、当初、セディク・バルマク監督は「虹」というタイトルで、アフガンの希望を描こうとし、撮影を進める中で、変更したそうです。マリナの言いしれぬ悲しみは監督の創作の意図を砕くほど、厳しい現実だったのでしょう。

 子供の悲しむ姿は、純粋で無垢なだけに強く胸に迫ってきました。そしてそれがアフガンの現実なのでしょう。子どもたちをこんな悲しみに陥れる戦争の罪深さを改めて感じました。

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