色を観る為の映画 おすすめ度 ★★★☆☆
蜷川実花さんのはいつも通り毒々しいサイケな世界感で、
土屋アンナさんはいつも通り「にやり」が上手くて、
木村佳乃さんはいつも通り悪役も結構ハマっていて、
椎名林檎さんはいつも通り歌詞の意味がさっぱりわかんなくて、
そうやって画、音、演技がうまく合致した良い映画だったと思う。
少なくとも、観ている間は引き込まれた。
菅野美穂さんはあまりに艶っぽく綺麗だったので、
少々不格好な裸の尻の骨格が、アンバランスに見えた。
妖艶で粋でもの哀しいあの原作を、うまく実写にしたためていたと思う。
蜷川実花さんはスチール専門だからなのか、
ワンカットワンカット切り取っても充分伝わるような印象に残るシーン作りが上手いなと思った。
それだけに庵野秀明が見切れた時はちょっと…と思った。
何気に出たがりなのだろうか、あの人は。
最後の二、三場面はまったくの蛇足だったと感じた。
あんなエピソードはわざわざ脚本に明文化して示さなくとも
容易に想像出来るだろう、むしろ、
私たちの頭の中の映像に留どめたほうが、
刺激的に余韻が残るはずだったのに。
「ぶっ殺してやる」とか、「三つしかない」とか、
いちいち言わなくていいのに。
がっかりな終わり方だった。
それでも、舌を巻くほどのゴージャスな世界観と、
それをギリギリのバランスで張り詰めさせている
ストーリー展開と台詞回しは圧巻。
縦書きのエンドロールは初めて観た。
概要
演出家・蜷川幸雄の娘で、写真家として有名な蜷川実花が初監督に挑戦。原作は安野モヨコ、脚本はタナダユキ、音楽は椎名林檎と、ガールズパワーが結集された1作だ。舞台は江戸の吉原。遊郭「玉菊屋」に連れて来られた少女が「きよ葉」と名づけられ、成長して吉原でもトップの花魁「日暮」となるまでを描く。大門の上に金魚が泳ぐ水槽が飾られるなど、吉原や遊郭内の美術が斬新でカラフル。金魚や花がふんだんに使われ、時代劇とは思えない遊び心に満ちたビジュアルが、物語にぴたりと合っている。 きよ葉を演じる土屋アンナの豪快な演技が楽しい。つねに“マイ・ウェイ”で突き進み、先輩の花魁に臆することもないし、気に入らない同僚の遊女には跳び蹴りまでくらわす。強気な彼女がチラリと本音を出す瞬間、観ているこちらも胸が締めつけられるのだ。アンナに負けじと、菅野美穂、木村佳乃らの大胆なラブシーンにも驚くばかり。女優陣のヌードはあっけらかんととらえる一方で、安藤政信ら男優陣を見つめる映像は、妙に艶っぽくて、女性監督らしい視線が感じられる。(斉藤博昭)
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