旅先のペンションのラウンジで初めて目にし、感動してしまい購入おすすめ度
★★★★★
本書刊行の事情について何も知らないままに言うのだが、この絵本には不思議なところがある。だって翻訳絵本と言えば普通は絵も原著のものを使うでしょう?
Web上で私が調べた限りでは、原著は1965年に中国で出版された“A Returned Turnip”だそうだが、本書の初版が刊行されたのも1965年4月(本書の書誌データに出版年1987年とあるのは、再刊)で、ほぼ同時。原著に絵はあったのか? なぜタイトルが英語なのか?
作者のファン・イーチュンは1914年に蘇州で生まれ、元は中国の少年児童出版社の編集者だったらしい。そして朝鮮戦争時の野戦病院での実話(傷病兵たちがリンゴを譲り合った)をヒントにこの物語を書いたという説がある一方、中国の民話の再話という説があり、物語内容から見て民話説も捨てがたい。しかもポール・フランソワ『ゆきのひのおくりもの』という、本書とほぼ同一内容の絵本(邦訳あり)があって、絵まで似ているようだ。
で、その絵だが、村山知義の作画。この人は1901年生まれ。東大中退後、1922年からベルリン遊学。帰国後は表現主義美術運動の紹介者となる一方、プロレタリア文学運動に参加し、1930年に治安維持法で逮捕。戦後は主に演劇界を活躍の場としたようだが、絵本なども含む多くの絵画作品を残している。
そういうわけで、本書には思想的背景の存在が濃厚に感じられる。ただし思想で割り切るには、村山の絵はあまりに魅力的。本書の魅力の大半が、絵の力によるのは確かだと思う。
3歳からとありますが
おすすめ度 ★★★★★
『最近うちの子は、文字が少ない絵本(ページに数行)を卒業してきてるから、もう少し文字が多めの本で何かないかな?』という方にお薦め。
ストーリーもやさしく、動物が出てくるので、読み聞かせができている子なら2歳まえでも良いと思います。