消化しきる事のできないSFおすすめ度
★★★★☆
統制された社会とそれに反し脱出を試みるヒーロー、このプロットは映画、その中でも近年の作品で云うと「マトリクス」や「リベリオン」にも通じるものがあります。
薬及び神の様な統一者への忠誠を基盤にして人々をコントロールすると云う部分では後者に近いでしょう。
併し決定的に違うのが、その世界を明確に現すのでは無く、1シーンをフラグメントの様に積み重ね、概観を曖昧に見せているところです。
冒頭からパッチワークの様に繋げられていく一つ一つの画は、いやがおうにもその繋がりを追う為に頭を使う事の行使を促され、
それと同時に「REM」の様な、見ている側が記憶をとばされる様な奇妙な感覚に唯身を任せると云う逆の効果も与えられました。
そしてある程度世界設定を把握した中盤以降最後まで、何が世界を支配してるのか、脱出する先に何があるのかも分からず、
リンチの作品を観終えた後の様な心地良い不愉快さを覚えます。
特典のDVDでルーカス等製作者の言葉を聞く事ができますが、わたしはこの映画に込められたアイロニカルな部分等のメッセージは汲み取る事は
できず、それを踏まえた上でもう一度見返すと理解でき、多少不条理感は拭えるのかなと思いました。
わたしはこの様な何度も観なければ気の済まない様な作品は大好きです。
御注意!71年版ではありません。
おすすめ度 ★★★★☆
この作品もスター・ウォーズのDVD同様、新作カットや修正カットのテンコ盛り状態で、あくまでも2004年版と考えた方が良いでしょう。知らないでみると、「うわっ、特撮シーンこれ本当に71年の作品なの?凄いじゃん」ということになります。71年版が観たいという人には残念な内容であり、古くてチープそうだからイヤだと思ってた人には、意外に満足できる映像となっています。興味ある方は、ビデオやLDで出ているオリジナルと比べるといいと思います。オリジナル版でもルーカスのセンスは十分に堪能できます。都市の表現などはゴダールの「アルファビル」等に影響を受けたらしいですが、「インスパイア」という名の「パクり」が反乱する中、これだけオリジナリティーのあるものを作れる人はやはり天才なのでしょう。
概要
ジョージ・ルーカス監督が、学生時代に製作した「電子的迷宮」をフランシス・フォード・コッポラ監督のもとで長編リメイクしたSF映画。「スター・ウォーズ」で知られるルーカスだが、本作は対照的にコンピューターが支配する冷たく閉鎖された未来社会が舞台となっている。
25世紀。地下に広がるシェルターで人類は名前さえ持たない、番号で管理され、精神安定剤の服用を義務づけられていた。そんな中、THX-1138は女性ルームメイトのLUH-3417と安定剤の服用をやめ、禁じられている肉体関係を持ってしまう。
モノトーンで描かれたシェルター内部。その非人間的な社会の恐怖は映像だけでなく、音響にも反映されており、終始低音部で薄く流れているノイズが、冷たく先鋭的な緊張感をさらに強調している。自由への渇望というテーマは「スター・ウォーズ」の、とりわけ「新たなる希望」と共通しているが、同じ監督でも題材の違いがこれほど異なる印象を与えるものだろうか。(斉藤守彦)