Atomic Rooster
ブリティッシュロックバンド、アトミック・ルースターの1st。1970作
オルガンを中心にしたギターレスのトリオ編成ながら、
ELPのようなクラシカル志向ではなく、あくまでもハードロック、
そしてブルーズロック的な質感で聴かせるサウンド。
ドラムを叩くのは後にそのELPに加入するカール・パーマーで、
手数の多いドラミングはこのサウンドの核をになっている。
朗々とした歌声とほのぼのとしたオルガンの音色のギャップがある意味個性的で、
フルート入りの曲もあったりとプログレとハードロックの狭間を行き来する。
Death Walks Behind You
70年発表の2nd。1st発表後、カール・パーマーとニック・グラハムが脱退。元アンドロメダのジョン・デュ・カン(g、vo)、ポール・ハモンド(dr) が参加してベース・レスで制作された作品。ギタリストのカンの加入によって1stにあったオルガン・ロックたる雰囲気はほぼなくなり、ヘヴィなギターのリフを活かしたストレートなハード・ロックに生まれ変わったかのような印象を受ける。曲作りの点においても新加入のカンの活躍が目立っており、共作を含めて半数が彼の手によるものとなっている。1.はギター中心のハード・ロックであり、印象的なリフとスピード感を加味したミドル部分の対比が素晴しい佳曲。彼らの新生面を象徴する一曲だ。2.はオルガンとギターが拮抗するジャズ・ロック。何となくコラシアムあたりを彷佛させるなかなかの仕上がりだ。3.は比較的ポップな曲。端切れの良いハードなギターと軽やかなオルガンのトーンが彼らなりの爽やかさを醸し出している。4.はバロック調のオルガンとブルース・ロック調のギターを聞かせるハード・ロック。『ホーム』の頃のプロコル・ハルムをストレートにしたかのような曲だ。8.は1stを彷佛とさせるオルガン・ロック。プチEL&Pのような演奏がたまらない!!
カンのギターは個性は強いとは言えないが、テクニック、や味わいという点ではなかなかのもの。クレインのオルガンとのバランスも素晴しく、いわゆる70年代英国ハード・ロックとしては地味な佳作と言えると思う。3.が全英11位を記録しており、グループとしては本作で一応の成功を射止めたと言って良いと思う。
In Hearing of (Reis) (Dlx)
71年発表の3rd。専任ヴォ−カリストとしてピート・フレンチを迎えて4人組となって発表されており、アルバムは全英18位のヒットを記録している。メンバーはイメージ的には地味ではあるものの実際にはかなりの猛者が揃っており、楽曲の良さを含めて本作を最高傑作とする者が多い。
1.はナイスを洗練させたかのようなピアノ・ハード・ロック。ありそうで少ないピアノの低音を活かしたハード・ロックの佳曲として一聴する価値はあるだろう。ピアノとオルガンのユニゾンのソロもたまらないものがある。2.はギター主体のハード・ロックでオルガンは控えめ。中盤のメロトロンの重圧なサウンドがプログレ・ファンには聞き物。3.ピアノによるバラード調の曲。4.もモロにナイス。
一聴して分かるのはクレイン主体の鍵盤曲とカンが中心となったギター主体の曲の違い。正直なところこの両極端な音楽性はグループの魅力とメンバーの競争心を向上させていると思うのだが、当のメンバーには軋轢の結果だったのかもしれない。本作発表後クレインと他のメンバーとの音楽性の違いからクレイン以外のメンバーは全員脱退してしまい、黄金時代とも言える期間も短期間で終わってしまった。カンとハモンドは元クォーターマスのジョン・グスタフンと共にハード・スタッフを結成して本作の延長線上の作風を披露している。フレンチはボガード&アピスを擁するカクタスに参加した。