陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫)
私はへそ曲がりである。
ブームに乗っかるのが嫌なのである。
だから“陰陽師&安倍清明ブーム”の真っ最中には、この本を手に取ることはなかった。
映画も観なかった。
やせ我慢というやつである。
先日、偶然に『陰陽師』と『陰陽師2』を観る機会に恵まれた。
非常に面白かった。
面白くて興味が湧きあがるのを、最早止めることも出来ずに本書を購入した。
何故、今まで読まなかったんだ!とへそ曲がりの自分自身に腹が立った。
平安時代…まだネオンサインも街灯も何にもない時代である。
当然“暗くなったら寝る”生活であったろうし、もののけや鬼や霊やいろんなものが当たり前に存在していた、
或いは信じられていた時代であったろう。
そういった類のものに驚きも動揺もせずに、当たり前に対処する安部清明。
痛快である。
本書を読んで感じたのは、深い深い静けさと漆黒の闇である。
まるで自分がその中にいるかのように感じ、清明と博雅の姿をこっそり覗き見しているような気になった。
それだけ物語の力が、引力が強いのだろう。
最初の一文で、その世界に入り込める。
安部清明はいわゆるスーパーヒーロー的な存在なのだが、あまりに淡々と事に当たる為、
読み手も淡々と出来事を受け止めるしかない。
平安の世も、この作品のような暗い静けさの中に存在したのであろうか。
いずれにせよ、文句なしに面白く、楽しめる本である。
歴史的な知識がなくとも十分に楽しめる。
読まないと損、な本に属するのは間違いないだろう。
必読である。
魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)
主人公「薬師寺涼子」は、超美人で、スタイル抜群!お金持ちなキャリア組警視庁刑事部警視。いわゆる超エリート。
しかし、口は悪いは、性格も悪い。彼女が歩くところに事件が起こる。
(いや、起こらざるをえない)
ついたあだ名が「ドラよけお涼」。
彼女のもとで部下キャラ泉田君(ノンキャリア)は、働く、働く・・・。 どんどん肩書きが増えていって奴隷のような扱いでも、必死に働く姿はちょっと感動モノ。
田中芳樹の軽快なタッチでショッキングなはずの事件がちょっぴりコミカルに描かれたシリーズ第一弾「摩天楼」。
東京湾岸付近で起こる奇怪な事件に「ドラよけお涼」が立ち向かうわけです。
楽しくて、ワクワクして続編が楽しみになった一冊です。