ラストエンペラーと近代中国 (中国の歴史)
講談社による中国史新シリーズの第10巻で、清末の太平天国運動から日中戦争勃発の頃までの約100年間を対象に、近代中国の苦悩と希望の歩みを説き明かすものです。気が付いたことは以下のとおりです。
(1) 中国近・現代史というと、惨憺たる暗黒の時代を対象とした上、何かしら思想含みの堅苦しい説明がなされるというイメージが強いのですが、本書では、当時の中国が置かれた過酷な環境に触れつつも、新しい機運の胎動といった積極的側面に注目し、改革に尽力した人々の活躍を平易な言葉で描いています。随所に魯迅らのエピソードなども交えており、読み物としても楽しめる内容となっています。
(2) 時代の方向性に強い影響を与えた数々の出来事、すなわち、太平天国の乱、変法自強、孫文や毛沢東らによる革命運動などにつき、「南の辺境から吹いた新時代の風」という言葉を用いたユニークな捉え方をしており、この見方を本書の縦糸としています。
(3) 袁世凱の開発独裁志向のストロングマンという側面を紹介したり、孫文と国民党の専制体質を指摘したりと、政治的立場にとらわれない率直な解説がなされています。
(4) 他方、この時代の社会的・経済的・文化的な状況については必ずしも力が入っているとは言えず、この点については些か物足りないものを感じる向きがあるかも知れません。
さて、本書では、台湾出兵から日中戦争に至る日中関係の激動にも少なからぬ紙幅が割かれています。こうした部分を読むにつけても、「あの時に日本がこうしていれば」とか「何故あの時に日本はこうできなかったのだろう」などといろいろなことを考えさせられました。そうした思いも込めて、広く皆さんにおススメしたい一冊です。
1996
CDをたった一枚だけ選べと言われたら、今でも私はこのCDを選びます。坂本龍一の心を揺さぶる名曲を凝縮した一枚です。演奏自体も、チェロ、バイオリン、ピアノの響きがシンプルでいてこの上なく美しい。非常に素晴らしいです。多くの方にこの一枚を落ち着いてゆっくりと味わって欲しいです。 ただ、一点のみ残念なのは、2曲目のRainです。この曲のみはオリジナルの方が明らかに良いと感じました。非常に好きな曲だけにより残念です。
ラストエンペラー [DVD]
史実と何処まで、肉薄しているのか、それはともかく、序盤の観客を、作品内にぐぅっと、引き込む、演出は圧巻だった。公開当時、上京したワタシは、映画館で、当作品を観た。結局、映画館では、4回観た。 現在と、過去を青系、赤系(と言っていいものやらだが)の色彩美で、対比させていて、実に秀逸な演出。現在、過去をほぼ、交互に、演出し、物語を進めていく。公開当時は、長時間の為かなり、カットされたシーンがあったようである。 映像と、音楽、細部まで、こだわりぬいた作品。
ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー
ベトナムがフランス領だった頃、ベトナム独立を目指して日本を訪れた王子がいた。
日本はベトナム独立を援助せず、王子を導いた革命家は志ならず故国で亡くなり、王子は妻子と会えないまま貧困の中、日本で客死する。
こんな人がいたなんて、この本を読むまで知らなかった。
王子は、訪日して数十年たっても日本語も碌に話せない、知り合いも作らない、学校に行っても怠慢で退学になる、など気合の入らないこと甚だしい。しかし数少ない知己の犬養が首相着任の折には新生ベトナムの旗を持って訪ねたのだから、目的を忘れたわけではないらしい。棚ボタを待っていた?
受動的で、超のん気で、気力に欠ける。この性格的特徴は、清国のラストエンペラー溥儀にも共通するように思う。
しかし革命軍にしても、錦の御旗である王子様を実務で使う予定などないだろうに、参謀もつけずに異国の地に放置したとは解せない。
紙数が多い割に情報量が乏しい、同じ内容を言葉を換えて繰り返す、事実の量よりもそれを埋める空想の量の方が多い、オレ様な語りっぷりが鼻につく、など文章は嫌いだが、この本をきっかけに近代ベトナム史に興味を持てたのは◎。