高杉晋作(上) (講談社文庫)
著者の池宮彰一郎の作品はいままで読んだことがなかったのだが、この本を読む限り、日本語の使いまわしに長け(聞いたことのない言葉がいろいろでてくる)そして、文章やセリフが簡潔で、余計なことは言わぬと調子で、テンポがあり、読みやすいのだけれど、個人的にはもうちょっと味のある人物描写や状況描写がほしいと思った。
この他言無用の調子が高杉晋作からくるものなのか、それとも著者からくるものなのか、さだかではないけれど、こんな調子で本当に人がついてくるものなのかはちょっと疑問だ。歴史的に見ても長州藩の外には一歩も踏み出さないという信念を貫いたことと、維新の前に病死してしまったことが、彼を、西郷隆盛や坂本竜馬ほどの有名人にさせなかったことにつながるのだろうけれど、いかんせん、自分自身の勉強不足もあり、彼がどれほどの人物だったのか、本作品を読んだ後もあまり強くは感じなかったというのが正直な感想である。
ただ、吉田松陰から始まる尊王攘夷から開国、そして維新にいたるまでの、藩の動きや、列強とのやりとりを学ぶ上では非常によい本だと思う。
最後の忠臣蔵 [DVD]
幾多の忠臣蔵作品で、後日談物は初めてだったのでひかれました。鑑賞し終わった後に原作を読んでみたくなるほど、とても良かったです!主演の上川さん始め、豪華なキャストとその演技力も素晴らしく、美しい言葉遣い、心に留めておきたい名台詞の数々を見つけることが出来ました。「忠義に死するは容易なこと、生くることこそむつかしい・・・」「忠義に死んだものは誉れに高く、残されたものはぶざまな生きようをしいられる」この時代のそれぞれにおかれている立場の考え方の相違、想いなどが描かれており、忠臣蔵ファンならずとも見ていただきたいですね。いろんな意味で日本人の心底に流れる思想を揺り起こしてくれるような静かで力強い作品でした。
高杉晋作(下) (講談社文庫)
司馬遼太郎の歴史小説を読んだり大河ドラマを見ても、高杉晋作という人物がどうしてすごいのかは、なかなか理解ができなかった。この本は15年ほど前に一度読んでいたが、どうも高杉晋作とは何者なのかがしっくりしないので、もう一度読み返してみた。確かに長州藩を復活させて、薩長同盟が政治的に意味のあるものにした力としては、高杉晋作の統率力、行動力、一途さは必要だったと確認できた。奇兵隊が階級社会を否定する民衆の軍隊で、それが数で勝る幕府軍を負かした史実は喝采すべきものがある。それでも長州藩に閉じた高杉晋作の生き様は、現代の視点で読むと、物足りなさを感じる。この本は、高杉晋作を描く以上、そのような限界があるのは仕方ないが、著者が高杉晋作を他の志士たちよりも英雄のように描こうとすればするほど、違和感も感じてしまうのである。
遁(に)げろ家康 (下) (朝日文庫)
家康の生涯を描いた作品は極めて少ないが、本作品は簡潔にまとめてある。やはり山岡荘八作品には及ばない。確かに家康の人生は遁げに終始していた。それが長い時間をかけた天下取りに結びついているといえる。家康のつぶやきが現代風の口調になっているところが多少気にかかるがやむを得ない。歴史小説268作品目の感想。2010/07/10
四十七人の刺客 [DVD]
すべての期待を裏切る忠臣蔵。それを前提に観なければ、この映画は語れないし解りません。これは刺客集団の物語ですし、大石はその頭なんです。そこの所、押さえて観なければ駄作だと思い知らされる映画です。