Volunteered Slavery
グロテスク・ジャズとか言われてるが今の耳においては音そのものは全くまともである。しかしこのエキサイティングな音楽はなんだ。これをジャズと言っていいのか。たまたま題材とミュージシャンがジャズにカテゴライズされるだけでその精神はむしろブルースやロックに近い。何日もかけて煮こんだモツ煮のような、いやソウルフードというべきか。全く絶品だ。遊び心も満点だが完成度の高い一流のファンキーな音楽だ。様々な表情で飽きさせない構成となっている。コルトレーンメドレーはただ美しいの一言だ。
ザ・ジャズ・コープス・フィーチュアリング・ローランド・カーク
近未来的な音を出すヴァイヴ入りのピアノレスという事で、非常に抜けのいい、乾いた音だ。
ローランド・カークの参加作では異色の内容。
と言うのも、ソロ・パートになると「単一楽器」でアドリブをかまし、
それに加えて、珍しく「バリトン・サックス」を吹く曲もあったりする。
いや、それ以上に「異色」なのは、春の陽だまりのごとく穏やかで、洗練されたこのグループとは、
相容れない音楽性のカークが、このレコーディングに参加した、という事だろう。
この「非力な」ハードバップ、要するに、典型的なウェスト・コーストの中では、
たとえ単一ホーンであっても、楽器音痴の俺でさえ、すぐにカークと判っちゃうもんね!
ヴォランティアード・スレイヴリー
強烈な皮肉に満ちたタイトルが示すものはR.カーク流の社会へ対する精一杯のアンチテーゼなのかも知れません。
少し調べると判りますが、本作('69年作)リリース前年にM.ルーサー・キング牧師が他界しています。多くのジャズマン達がこれに反応を見せた訳ですが、R.カークもその一人。
[5]に込められたR.カークの思いを全て汲み取れる程耳の肥えた優秀なジャズリスナーではありませんが、本作で展開されるそのパワーは圧巻の一言。
#無論、感傷に浸るも浸らないもリスナーの自由です。
[6]-[10]は'68年のニューポート・ジャズ・フェスでの録音ですが、実はJ.コルトレーンも前々年に他界しているんですね。
先のキング牧師と共に、こちらはコルトレーンへのトリビュートとなっています。ラストの[10]で頂点に達する勢いは凄まじいものがあります。
ジャズのみならず、ブラック・ミュージック好きな全ての音楽ファンに聴いていただきたい名作です。
溢れ出る涙(+1)
魂のこもった音楽だと感じる。聴くときは、BGMとしてよりも、真剣に聴くことにしている。何度聴いても深く、汲みつくせぬアルバムである。
ホーンを2本くわえているジャケット写真ではあるが、このアルバムでは、そうした曲芸的なエンターテイメントよりは、Roland Kirkの”ワンホーンカルテット”として、彼の肉声を聴く趣が強い。
彼の魂の肉声を直接に聴いているような気持ちになる。喜怒哀楽、すべての感情が、ホーンを通して響いてくる。圧倒的なヴォリュームの感情が押し寄せてくる。彼の中に、喜怒哀楽、様々な感情がぎっしりと詰まり、溢れかけているのではないかな。それが、音楽作品として出てきているように感じる。
タイトルとなっている曲を聴くと、やはり、真剣に聴いてしまう。「哀」の感情が強く出た曲だが、頭の中に響いてくる。Roland Kirkを思い出した時、真っ先に頭の中に出てくるのはこの曲だ。真剣に音楽を聴いてみたい方に勧めたい。