Klaviersonaten Band I
ヘンレ版の楽譜を探していたので購入できてよかったです。ヘンレ版はピアノ学習者が多く利用する楽譜で譜割も見やすくとても使いやすいです。和書よりも洋書の方が価格が抑えられていて良かったのでこちらの購入をお勧めしたい。ベートーヴェンも一緒に購入しました。BAND'Uの扱いがないのが残念。
ピアノピースー024 きらきら星変奏曲/モーツァルト
誰でも知っている主題、主題だけなら簡単、ハ長調、某マンガで取り上げられた、
・・・といった理由で、取っ付きやすい印象がありますが、なかなか歯ごたえのある、難しい曲です。
ビアノピース難易度ではD(中級上)とされています。ちなみに同じくモーツァルトのトルコ行進曲はBです。
(これはこれで評価が低すぎると思いますが)
ドレミの『ピアノ名曲110選』 ではAに載っていますが、何かの間違いではないかと思います。Cでもおかしくないと思います(トルコ行進曲はBに掲載)。
また長い曲で、計324小節、この版では8ページ、編集によっては12ページもあり、演奏時間も、繰り返しを省いても6-8分くらいかかります。
(ちなみに悲愴ソナタ第一楽章は310小節)
手の大きさも意外に求められます。オクターブ届けば一応大丈夫ですが、子供だと編曲しなければ無理です。
モーツァルトにしては対位法的な動きも多いので、バッハの曲などをやった事がないと苦労します。
難しい割に、苦労してもあまり難しい曲と思われない、という、ある意味では損な曲ですが、練習効果は非常に大きいものがあり、ハ長調のほとんど全てのテクニックが学べると言っても過言ではないと思います。
また変奏曲の和声進行を学ぶにも、ハ長調であることはうってつけで、本格的な変奏曲技法を学ぶ上で重要な曲です。
この曲は「モーツァルト・ソナタ集」などの楽譜には収録されておらず、『モーツァルト変奏曲集』 のような楽譜を購入しても、高価な上、他の変奏曲はそれほど弾く機会がないので、ピアノピース版で買うのは、お手頃ではあります。
譜割りは、8ページにまとめているのでやや窮屈で、変奏の途中で譜めくりをしなければならないところが何カ所かあります。また、綴じておらずバラバラで扱いにくいため、ドレミ版の方が使いやすいかもしれません。
それと、これはいわゆる解釈版なので、新モーツァルト全集などの、最近の研究を反映した楽譜とは異なっているところがかなりあるので(強弱、スラー、タイ、スタッカート、装飾音など)、注意が必要です。
新モーツァルト全集は、ネット上で一般に公開されているので、違いを確認してみた方がよいでしょう。
音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか (DOJIN選書35)
ホモ・カントゥスーHomo Cuantosー音楽するヒト
これは私たちヒトをあらわす著者による造語だ。
この本は福井氏による音楽と科学をテーマにした本の第三弾である。
氏の著書はどれもラジカルでオリジナリティーに溢れており、読者の知的好奇心を満足させてくれる。しかし想像するに周囲には敵が多そうだ。
1999年に出版された「音楽の謀略」は斬新なアイディアがたくさん詰まった本だったが、この新作ではそれらのアイディアに科学的裏付けが示され、かなり洗練された内容となっている。
このところ「音楽と脳」や「音楽を科学する」ことが流行のようで、これをテーマとした本が多数刊行されている。
仕事柄、関連書にはすべて目を通しているが、とくにD.レヴィティンの「音楽好きな脳」を読んで内容のお粗末さに唖然とした。何より驚いたのはレヴィティンの本(原著は2006年出版)のロジックや話題の展開、キーワード(たとえば「文字のない文化はあっても、音楽のない文化はない」など)、事例などが福井氏の「音楽の謀略」(1999年出版)と全く同じことだ。謀略の私的翻訳本が出回っているのではないかと疑ってしまうのは私だけだろうか・・・。
なにはともあれ、福井氏の強みは自身が堅実な科学者であることだ。それが本の内容に説得力をもたせている。
氏のこれまでの著作はすべて読んでいるが、その知識の量には毎回驚かされる。
なかでもこの新作は機知に富んでおり、音楽の本というよりも哲学書といったほうが適当だろう。
知の巨人とよばれた社会生物学の大家E.O.ウィルソンを彷彿とさせる。
ちなみに讀賣新聞の科学欄や日経新聞、アエラの書評欄でもこの本が取り上げられていた。旬のテーマを扱った話題の書には一読の価値がある。