イマジン秘蹟 3.WORLD’S END=SUPERNOVA (角川スニーカー文庫)
季節は7月、ただでさえ地球温暖化で暑いというのに夏まで到来で摂氏40度を突破、期末テストが終わったのがせめてもの救いという中、今久留主高校で突然クラスメートの頭が良くなったり、正義のヒーローと思い込んだり、観ただけで相手を魅了する能力に覚醒したりと、学校全体で魔女化症候群を発症する生徒が現れます。24時間以内に感染源の魔女を特定して祓わなければ学校の生徒全員が収容所送りになるという事態に、イマジンも風紀委員会と共に、尾津智弘の幼馴染みでもある生徒会長・寅屋敷薫の主導で調査に乗り出しますが、感染源の魔女の手先だった男子に翻弄されて調査はまるで進まず、あろうことかイマジンの美少女3人組までもが感染させられてしまいます。
光紗はニセチチを揺らす魔法少女に変身して、それだけで智弘ならずともくらくらしてくるのに加え、ちこりはゴーゴー鉄球を振り回して光紗との学園ヒロイン争奪戦を繰り広げ、確か元ネタのゴーゴーってセーラー服じゃなくてブレザーだったよなーでもちこりだから仕方ないかーと思ってたら、サナギが仮面舞踏会風のマスクを付けたパピヨンで降り立ち、ジュディ・○ングを歌うという、もはや混沌以外の何物でもありません。
人は誰でも物語の主役になりたいと思い、一生の中で1回かもしくは数回、本シリーズ的表現で言う“半径三メートルの世界”から飛び出そうとします。しかしほんの一つまみを除いてほとんどの人は自分が脇役にしかなれないことを思い知り、“半径三メートルの世界”に戻っていくものです。しかし、人の中にある外の世界との境界線が消えたら誰もが主役になろうとして互いに潰し合いになりますし、自分が主役になれないことを受け入れられなければ時として破滅的な行動に走りますし、いずれにしても悲惨な結果になることでしょう。今回の話は学校という限定的な空間の中とはいえ、そうした人の危うさを的確に描き出していると思います。
ローマ史のなかのクリスマス―異教世界とキリスト教〈1〉 (異教世界とキリスト教 (1))
本書は、我々が無意識の内に抱いている「クリスマス」に関する思い込み(ドクサ)を小気味よく打ち砕き、ローマ帝国と西方・東方教会勢力三つ巴の政治力学の中でキリスト教一般信徒が如何に利用され踊らされてきたのか、その舞台裏の事情を鮮明に浮き彫りにする。キリスト教権威の側にとっても、またその威光とドグマから逃れられない欧米知識人にとっても、このオフレコ話を真面目に探究することは大いに憚れることだろう。その意味で本書が日本人の手によって上梓されたことは、誇るべき必然的快挙である。本書の方法論は、西洋古典学の手法を駆使した人文研究の総合的成果であり、本邦象牙の塔御用達の「歴史学」「キリスト教学」の諸家には真似できないクラシックスとフーマニタースの学問の力、王道的醍醐味を軽やかに示す好著である。
光の祝祭―ヨーロッパのクリスマス
キリストの降誕の祝祭クリスマスの本当の意味、単なるお祭りではない、静かで、厳かなクリスマスの祝いの風景。この本では、ヨーロッパの人々の、静かで、心からのクリスマスへの気持ちを垣間見ることができます。小林恵さんの写真もとてもきれいです。何度も読み返したくなる本です。