嫉妬の香り (集英社文庫)
嫉妬って、一番周りに知られたくない醜い感情だと思います。
ですが、恋愛をすると誰もが経験した事のあるどうしようもないことです。
それを、リアルに描いたストーリーであり初めのスタートから主人公に入り込みます。
ストーリが自分の体験とダブル所がありとても考えさせられました。
男性、女性問わず読む価値有です。
男女のとらえ方や人生観の違いなんかとてもちゃんと表現されているので
読んでいて思わず本人になり切ります。
嫉妬を描くストーリですがとても綺麗です。
冷静と情熱のあいだ Blu~フィレンツェの異邦人~辻仁成プロデュース
映画はエンヤに釣られて跳びついて観たのですが、全然見応えがなくてがっかりしてしまいました。
エンヤは確かにイタリアの風景とは合っていますが、このストーリーに使うのには余りにも清純過ぎます。
はっきり言えば、あの映画は駄作です。エンヤは選曲ミスです。
このストーリーの映画はむしろリメイクして、エンヤの代わりにこのアルバムの曲を使用されてはいかがでしょうか。
右岸 上 (集英社文庫)
性と死、まさにこのテーマを書ききった渾身の作品。
性に関しては、時に気恥ずかしくなるような生々しい場面もあるが、
それは真っ向からリアルを描いているゆえ、自分の経験とリンクするところがあるからだろう。
1人の「少年」のすさまじい人生。
とことんまで死に向かい合った場面では、全身に鳥肌を感じながら読んだ。
人生観が広がったとまでは言いすぎかもしれないが、
読み終えた後、窓を開けて新しい世界を感じたくなったのは事実。
あえて言えば、もう少し阿弥とさき、茉莉との話も読みたかった。
その分、ラストの九の九は個人的にはやや蛇足に思えた。
まだ「左岸」は読んでいないが、本書だけでも十二分に成立している。
魂の一冊である。
サヨナライツカ (幻冬舎文庫)
主人公の豊が、なぜ婚約者がいながら、沓子との愛に溺れるのか・・・。
そして、なぜ沓子こそ最愛の人なのかもしれないと気付きながら、自分のそうした気持に封印して、婚約者と人生を歩むことを選んだのか・・・。
人生に「もしも」はつきものですが、結局「最愛の人」をあきらめ、安定した穏やかな人生を選択し、社会的にも相応に認められる立場(エアライン会社の副社長)まで辿りつきながら、壮年を迎えてなぜか心のどこかに空虚を感じる。
この小説の主題は人生におけるもっとも大事なものは何か、恋愛と結婚は別なのか、・・・といったことなのかもしれません。そしてこの問いへの答えは人それぞれですし、おそらく若い世代の人はそうしたことに疑問を感じること自体に嫌悪感を抱くかもしれません(やはり、一定年齢以上にならないと共感はしないかもしれませんね)。
今回、韓国人の監督が本作を映画化しましたが、主人公の複雑な心中を理解できなかったのか、あるいは映像化できないと悟ったのか、豊が沓子との愛を選びかけた時、フィアンセが沓子に豊の前から消えるように告げるという、きわめてわかりやすい、ありきたりのストーリーになってます(原作中の婚約者は一途に豊を信じているし、沓子の存在を知らない)。
しかし、辻仁成の文章はあまり上手ではありませんね。ミュージシャンが片手間に書いた感じです(さだまさし同様)。教養がないからか、言葉の使い方に??の個所もいくつかあったし、おそらくもう彼の作品を手に取ることはないと思います。
本当は同じ主題をもう少し力のある作家に書いて欲しかったですね。
Sq.-スクエア-
「答えのない答え探した」…「この頃」より。
辻仁成のオリジナル5thアルバム。辻さんの近年の作品に見られた「勢い」は変わらずなんだけど、少しその方向性が変わったよう。近年の作品では「変化せよ」と直接的に訴える歌詞が多かったが、本作ではもう少し説明的になり、「変わらない、変わっていない自分に気付き、そして自らの意思で変化せよ」という風に歌っているような歌詞が目立つ。
「誰かに操られてる」
「自分なんてあるようでない」…「誰かの思惑」
「もう若くはない、そう思う人の方が多いこの世の中
愛されていたい人が増えてもうやたらと混線しまくってる」
…「ラブ スクエア」
「飽きたわけじゃない/誰のせいでもない
なのに終わりは来る
心が持続しなけれて/みんな途中でぼきぼき」
…「どの方角から誰が来るのか分からないから全部開いてる」
「私はだれのもの
並べられた見せ物
罪の意識のない大人ばかりだね」
…「バラバラ」
そして上記の傾向が一番顕著なのが、「ファイ」である。
孤独は誰かに孤独であることを知ってもらいたいから、孤独ではない。
一人は誰かを傷つけたくないから傷つきたくないから、一人ではない。
本当に「孤独」「一人」であるのなら、そもそもそんなことは考えない。
それは「優しさを少し誤解したまま」で、「群れたい奴等のむなしい空集合」である。
ならどうすればいいのだろう?
その答えについて、このアルバムを聴きながら考えてもらいたい。