佐賀のがばいばあちゃん [DVD]
人気漫才コンビ“B&B”として一世を風靡した島田洋七の自伝的ベストセラー小説を映画化した感動ドラマです。昭和30年代の佐賀を舞台に、貧しくとも明るく元気に生きる祖母と孫の心のふれあいをノスタルジックに綴る。なんといっても主演の吉行和子によるところが大きいと思いますが、意外とよく出来ていて笑いの中にも、心洗われる映画になっていました。
吉行和子が本当に素晴らしい。初めて孫と顔を合わせる場面では、普通な感じで、オヤと思わせましたが、ゴハン炊きの場面からノンストップ。あれよあれよと、ばあちゃんのペースに巻き込む。(笑) 川を流れてくる野菜を拾っては「川は、うちのスーパーマーケット」と屈託なく笑い、スポーツをしたいと言い出すと「走りんしゃい!」とアイデアを出す。「地べたはタダ、道具もいらん」...納得です。(笑) 『セコイ』と思いつつも、「ケチはダメ、節約は天才」の言葉を聞くと、贅沢に慣れた今の世に忘れてしまったことを思い出させます。
運動会で先生たちが腹痛だと言って交換してくれるエピソードもいい。エビフライが美味しそうだった! これら先生たちや、おばあちゃんと明広を陰ながら応援するかのような周りの人々の描き方も良かった。いまさらながら、緒形拳は巧いし、山本太郎にも感心した。
このところの邦画は、昔の日本を描いた映画が多いのですが、本作も40年前の日本をきちんと再現していました。古い町並みも雰囲気があって良かったですが、何と言っても、ばあちゃんの家。家の真ん中に川が通る家をロケハンで実際に探し当てたとのことで、SFXが発達してもCGを巧く使えても、本物にはまだまだ敵わないということですね。
異邦の騎士 改訂完全版
目を覚ました「俺」は、堅いベンチから起き上がる。路上駐車した車を
思い出し、持って行かれるより先に退かせようと探したが、そんなもの
はどこにも見あたらない。その不安はそのうち、さらなる膨張をみせる。
そもそも「俺」は、自分がだれで何をしているのか、その記憶そのもの
を失っていたのだから…。
本作「異邦の騎士」のキーワードはずばり、「記憶」である。
『斜め屋敷の犯罪』にて、ダイナミックな空間トリックを披露した著者で
あるが、本作は主に「時間」という軸を駆使している。「記憶を亡くした
主人公」がアイデンティティを取り戻すために冒険するというのは、もし
かすると人類史上もっとも古い物語形式の一つなのかもしれないが、こ
の主人公「俺」が懸命にたぐるその記憶の糸の先には、ある明晰な頭
脳の持ち主が仕掛けた、恐るべき犯罪のシナリオが仕掛けられていた
のだ。
また島田荘司の25作目を飾る本作は、「御手洗シリーズ」ファンなら垂涎
の内容なのかもしれない。この小説では、あの天衣無縫なキャラクターが
魅力的な星占い師御手洗にとって紛れもなく「ワトスン」にあたる石岡との
出会いも描かれている。時系列に並べばおそらくシリーズの最初に来るだ
ろうから、いわば「御手洗潔ゼロ」という位置づけになるだろう。
なお、あとがきはこの講談社の文庫版とあともう一つ、最初の91年版のそ
れも収録されていて、いわば作者も複数の時代の複数の「私」が別々のあ
とがきを書いているのだ。この点、他の別の小説を読んだ後ならどうも思わ
ないだろうが、この作品のトリックの全貌を知ったあとに読むと、また違った
趣があるあとがきだった。
ところで、本作における「今」は、実は昭和五三年当時と、新しいようでいて
時代設定は結構古い。何しろ「十月十二日、王選手はホームランを打って
いない」というセリフが飛び出してくるのだ。そのほかにも「知恵遅れ」など、
まだ土着性の残り香のあったであろう昭和の雰囲気が全編を漂っている。
ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
私的なベスト3は、第三位・金原ひとみ。若夫婦・光と葵が直面する葵の出産。怖い。ごく普通の出産が、物の怪なんかよりずっと怖くてリアル。葵のマタニティー・ブルーを、光は理解できない。ごく普通の愛し合う夫婦なのに。男と女はこうして千年わかり合えずにいるのだとリアルに感じてしまう。胎児の性別を聞いて、なぜかパニック状態に陥り、光に悪態をつく葵に対して光のかける言葉が「葵、やめなよ。赤ちゃんに聞こえる」。千年経っても男はこういう無神経さをさらけ出す。
第二位・桐野夏生。女三宮が過去を振り返る。かつては光源氏と言われた貴公子だった六条院様は“祖父というには早いですが、歳を取り過ぎて”いて、女三宮は“幼い時の紫の上様”と比べても“今の紫の上様”と比べてももの足りなく思われ、“六条院様に何度も叱られ、貶され、しているうちに、自信のない縮こまった”気持ちになる。老いて嫌みったらしく、嫉妬深くなっていく光源氏の描写は秀逸で、驚くばかり。みごとな黒源氏だ。
そして第一位・町田康。ファンの欲目を差し引いても、すごすぎる。末摘花に対する源氏の思い込みや妄想が町田節で展開するのだが、もう本当にこの人の日本語は凄いです、一字一句めちゃくちゃおもしろい。読んだそばから読み返します。末摘花の琴を他の部屋で聴いていた源氏が、命婦に「もっと聴きたいんだけど。っていうか、向こうの部屋で聴きたい。襖越しだと音がミュートされてよくわかんない」と言うと、命婦が「でもどうでしょうか。こういう貧乏な生活してるから服とかもあれだし、いま紹介するのって向こうに逆に悪い感じがするんですけど」と答える……ああもうっ、絶対読んでほしい。源氏や頭中将の嫌らしさも絶品で、ラストはなぜか一気に虚無的に。最高。
あれ?気がつくと、嫌な源氏ばかりがおもしろい。原典がとにかく源氏はベリークールって刷り込みだから、少し食傷気味だったのかも。
島田洋七 がばいばあちゃん講演会~笑顔で生きんしゃい~
講演会と言うので堅苦しいかな?と思いましたが独演会か漫談のようです。どうせ暮らすなら笑っていたほうが楽しいですね。何度繰り返し聞いても笑ってしまいます。