千姫様 (角川文庫)
7歳で嫁いだ豊臣秀頼と義母・淀君と大阪城落城で死に別れ、その後本多忠刻に嫁ぎ幸せな生活を送るも夫と30歳で死別。江戸城に戻り、落飾して天寿院と号し、3代将軍家光のよき相談相手となり、また家光嫡男の養母となり、徳川一門に頼られて余生を意義深く過ごすその人生は、宮尾登美子氏の「天障院篤姫」の人生とも重なります。「篤姫」と違うのは、三帆という架空の女性を設定することで、男女の心の機微、人の縁の妙が織り交ぜて書かれていることで、この点は平岩氏の代表作「御宿かわせみ」に通じるものがあります。テンポよくストーリーを展開し、男女の関係にハラハラさせられ、ぐいぐいと作品に惹き込む作者の力量はさすが。最後にある千姫の言葉「あまりにも長く生きすぎました。よいこともみれば、悪しきこともみねばなりません」が、この一冊の中身を集約しているように思います。
新・御宿かわせみ (文春文庫)
長年のファンとして残念の一言。
「御宿かわせみ」は、何といっても、るいと東吾の二人が中心の世界。
そこにお馴染みのレギュラー陣がいて独特の「かわせみワールド」を楽しむことができたのに。
長いシリーズで作者も疲れてしまったのだろうか。こんな形で明治編に続くなら、一度幸せな雰囲気のまま江戸時代で完結して欲しかった。
その上で番外編としてぽつぽつと明治編を発表してもよかったのでは? 結局は同じことかもしれないけれど、その方が区切りがついてすっきりする。
なんだかんだ言って、また読み続けてしまうかもしれないけれど。
NHK大河ドラマ総集編DVDシリーズ 新・平家物語
若き日の仲代達矢扮する平清盛の乾坤一擲の気迫と、斜陽化してからの、やることなすことすべてが裏目に出るという閉塞状態が、子供心にも、強烈に焼き付いている作品だが、残念ながら、ここにあるのは総集編であり、当時は、総集編の作り方も未熟であったのか雑であったのか、所々、わかりにくい部分があり、特に、人間模様などの、説明が必要とされる部分でそれが顕著であるようである。
ところで、この作品を見ていて、ふと、思ったのだが、「平家は頼朝を助けたばかりに頼朝によって滅ぼされてしまった」という、巷間言われる「情けが仇」の見本のような話があるが、清盛が源氏の幼子を助けたというのは、決して間違った判断ではなかったのではないか?
なぜなら、保元・平治の乱という熾烈な権力闘争の後、人々は新しく権力者として登場してきた「武士」という武力を持った新興階級に対し、著しい不安感を持っていたと思われ、遺児らを助けることは、まずは、それら不安感の払拭に効果があったと思うからである。
(現に、清盛死後、平家を都から追ったのは、頼朝でも義経でもなく木曽義仲なのである。)
もっとも、ここまではいいとして、私が疑問に思うのは、なぜ源氏の嫡男を伊豆へなどなど流したのか?ということである。
関東は元々、源氏の地盤であり、今は平家に靡いているとはいえ、湿った火薬庫に火の気を投げ込むようなものではなかったか?
私なら、頼朝は京に留め置き、貴族制に代わる武家政権の樹立という源平共通の利害目的を掲げ、その上で、一門の娘をあてがい、平家一門(武家側と言い換えてもいいかと)に取り込む。
それができないのなら、せめて、源氏の基盤である東国ではなく、平家の基盤である西国へ流すべきだったのではないか。
清盛も、まさか「伊豆」と「伊予」を間違ったわけでもないだろうが、何とも腑に落ちぬ選択である。
現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)
白井喬二訳が、とても読みやすい。
口上も見栄もカッコイイ!
八犬士が強すぎる。始めはスカッ!とするが、
これほどに強すぎる神業の、何度とない
繰り返しは食傷気味になりがち。
それでもなお、主人公たちの魅力に
「かっこいいよなぁ」とため息が漏れる。
面白いから次々とページをめくり
前のめりに気持ちが急いてしまう。
これも現代語訳の妙あったればこそ。
感謝感謝につきる。
主人公たちは、ひたすら義をつくし、
主人公方の人物も八犬士に感化されてか
悲しいほどに、ひたむきな愛の持ち主。
悪者は典型的にワルである。狡猾で
油断ならぬクセのある者ばかり。
勧善懲悪と一言で片付けられない。
幾層にも織り込まれた
幻想的な豪快活劇、ここにあり!
小判商人―御宿かわせみ〈33〉 (文春文庫)
今回も楽しませていただきました。
少しずつ移っていく時代背景とともに、登場人物の成長や、気持ちの変遷に
いつもながら感じ入ります。
基本短編集ですから、一話ずつ時間のある時に楽しんでいます。
御宿かわせみのシリーズは文庫本が出るのをいつも楽しみにしています。
女性ならではの心の描写に、ぐっと来ます。お勧めです!
シリーズの最初から、何度読み直しても面白いですよ。