硫黄島からの手紙 期間限定版 [DVD]
太平洋戦争において、今まで黙殺されてきた感のある硫黄島の戦い。
日本本土侵攻への足場を固めるといった明確な目標があった米軍に対し、日本軍は大本営の命に従い、武器、弾薬、食料が尽きるなか、希望の無い絶望的な抵抗戦を続けなければいけなかった。高温多湿の洞窟のなか、日本兵の戦死者の多くが戦闘ではなく餓死や疫病の蔓延による病死といった事だけをとってみても、いかに硫黄島の戦いが想像を絶する地獄絵図だったかというのがよく分かる。
しかし、この「硫黄島からの手紙」ではそこまで凄惨な描写は控えている。実際はこんなものじゃなかったはずだと思う所もあるが、同じ日本人としてこれ以上リアルに描かれるのはつらい。イーストウッド監督もそうした配慮があって、あえて踏み込まなかったのかもしれない。
映画ファンとしてよりも日本人として、祖国の為に硫黄島で戦死された兵士の方々に光をあててくれたイーストウッド監督に対し、感謝の念に絶えない。同時に、アメリカ人の監督によって硫黄島の悲劇を伝えてもらった事実を、日本の映画界は重く受けとめて欲しいと思った。
京山幸枝若秘蔵浪曲特選集(九) 新野 新作「玉砕硫黄島」 浪曲「利根の名月」
新野新は、幸枝若のために『嗚呼 浅間山荘』などの幾つかの新作浪曲を書きました。そのうちの一つが、この『玉砕伊王島』です。内容は戦時物ですが、第二次世界大戦時、伊王島で戦死した西中尉の物語。西中尉は、ロサンジェルス・オリンピックの最終日の馬術大障害で、日本で唯一の金メダルを獲得した英雄。未だにロサンジェルスには、西中尉の記念碑が残るほどの名馬術家。伊王島に米軍が攻め込み・・西中尉は戦死するのだが。
米国人登場人物名は、架空のものだが、米軍は西中尉が伊王島にいることを知って、西中尉に投降するように呼びかけたとか・・・真偽は不明。
幸枝若が、新作に挑んだ数少ない名作。
『利根の名月』は、おそらく前半部分(LPのA面)は割愛されていると思われる。
散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)
硫黄島が太平洋戦争屈指の激戦地であったことは聞いていましたが、本書を読んで初めてどれほどの地獄だったのかということ、そして戦争の行方にいかに重要な意味を持っていたのかを知りました。テレビで若い自衛隊員が「こんな蒸し風呂のようなざんごうにもぐって何ヶ月も戦ったなんて信じられない」と話しているのを見たことがありますが、雨水を唯一の飲料水として生き延び、かつ戦闘を続けていたことは衝撃的でした。
本書が一般の「戦争本」と大きく違うのは指揮官の栗林中将に軸足を置いて描いている点です。この栗林が実に魅力的な人物で、組織の力というものがトップの能力・人柄によってここまで変わるか、という驚きが強く残りました。硫黄島は唯一米側に日本以上の損害を与えた戦場といわれますが、それは栗林が熟慮の末にあえて大本営の方針に反した戦術をとったことが大きく影響していることがよくわかります。なぜそうした判断をとったのかが詳細に書かれていますが、それはとても興味深く、そこらへんの経営書やリーダーシップ論の本よりもよほど有益です。
栗林は冷静沈着な指揮官でありながら、留守宅の小さな子供たちへの愛情や台所のすきま風のことを心配する、よきお父さんとしての顔も家族に当てた手紙の丁寧な記述から浮かび上がります。そうした著者の視点があることで、本書はいっそう読みやすくまた印象深い内容に仕上がったのだと思います。
太平洋戦争に関心のある方にとっては目からウロコの一冊となるでしょうし、まったく関心のないという方にとっても、魅力的な人物と出会う楽しみが得られる良書だと思います。歴史は人が作っているということを改めて実感します。私には忘れられない一冊になりました。
父親たちの星条旗 (特別版) [DVD]
日本側を描いたのに対し、こちらは連合国側。
それぞれ苦悩を描いています。
戦闘描写はこちらが多めですが、それを期待して観るとガッカリするかも。
監督も言っているけど、「過激な映画を観たかったら他の映画を観るべき」というようなことを以前何かのインタビューで見聞きした覚えがあります。
内容はすごくまとまっていて、日本側を描いた作品とうまくリンクしている2部作成功作品だと思います。
個人的にはこちらの方が出来はいいですよ。
硫黄島からの手紙 (特製BOX付 初回限定版) [DVD]
この作品は本当にすばらしいです。
これがほんとにアメリカ人がとった映画なのか?と疑うほど日本をスムーズに描いていて、改めてクリント・イーストウッドのすごさを実感しました。
ハリウッド映画はアメリカ=善、他=悪、と極端な二元論の考え方をしがちですが、クリント・イーストウッドは敵国であった日本人にもそれぞれの人生があり、愛する家族があり、思いがある。とそこに気づき、なんの違和感もないアメリカ製作の日本映画を撮ってくれました。
そして渡辺謙はもちろんのこと、アイドルとして活躍している二宮和也の存在感もすごかったです。
自決のシーンなどは目を覆ってしまうほどショックなものでしたが、これが事実なんだと実感しました。
先の父親たちの星条旗で、米兵が日本軍の洞穴に入り「自決している」と言ったシーンがあり、ここではそれ以上の追求はなかったんですが、後の硫黄島〜にこの事がちゃんとリンクしていたのも2作品通して1つの作品なんだと思いました。