罪と罰
不可避的にメディアに登場することになり、被害者遺族の象徴のようになってしまった本村さんが参加したこの対談集は、死刑問題だけでなく彼がこの10年で抱えてきた葛藤と覚悟を様々な角度から知ることが出来る本だった。
ただの一社会人で、サラリーマンの本村さんが辿ることになったこの10年の足跡には、メディアで報道されている側面でしか知らない私には考えさせることが多かった。
本村さんへの質問を、敢えて内面に踏み込むために聞きにくいことであろう事件そのものについても踏み込んでいる。
被害者遺族に対し世間は第二の殺人をしているかのような行動をしてしまうが故に、本村さんが自身の基軸をずらさないでいた内面がこの本から伝わってくるから哀しみが胸に迫った。
「光市母子殺人事件」判決文全文はかなり読み毎えがあります。
「性の自己決定」原論―援助交際・売買春・子どもの性
セクシュアリティ。それは「生きる」ための権利の一つであり、これを考えることは「生きる」ことを考えることでもある。この本は個人のセクシュアリティを侵害、抑圧する社会に対し、自己決定権というキーワードを武器に論を展開している。
ただ、八人の著者がそれぞれの視点で論じるという形式なので、包括的な、「これが答え」というような結論は出されていない。しかし逆に、読む人が引っかかりを覚える視点や素材がちりばめられていて、読む人によって、また読む時期によって感想が異なる本と言える。その意味で、この本は入門書でもあり専門書にもなる、読み返す価値のある一冊と思う。
李藝---最初の朝鮮通信使
朝鮮通信使のことは、2010年夏の瀬戸内国際芸術祭の展示の一つにあって、その時に初めて知りました。江戸時代、鎖国中にも朝鮮と親交があったことも驚きでしたが、この小説を読んで、朝鮮通信使が室町時代にまで遡れることを知り驚きました。
年老いた主人公が、人生を振り返って息子に語るという設定がグッときました。また今の恋愛とは違う、偲ぶ恋というのも、切なかったです。
日本と韓国の、大昔からの友好的なつながりを感じられてとても嬉しく思いました。日韓合作で映像化もされるそうなので、どのような映像(映画?)になるのか楽しみです。