愛その他の悪霊について
ノーベル賞作家たるガルシア・マルケスの作品である。面白くないわけがあるまい。悪霊付きの聖者の物語。いつまでも心に残るたぐいの小説だ。少女は愛に憑かれていたのか、愛のために死んだのか。愛を肯定しつつも否定する話。
愛その他の悪霊について [DVD]
静かな映画である。
台詞も最小限に抑えられ、美しい映像と役者の姿を追う事で話が進む。
マルケスの世界を現実として受け入れ、狂気や毒気、マジックレアリスム的要素を引き算し、
押さえた表現と美しい映像で、幻想的な作品に仕上げている。
マルケス原作の映画で少女が主人公の「エレンディラ」(大好きな映画の一つ)があるが、
映画「エレンディラ」が原作の空気をそのまま味わえるのに対し、
この映画は監督のイメージの世界を味わうものとなっている。
監督が一度咀嚼し取り入れた後に、少女の彫像を彫り上げるように作りあげた印象。
マルケスの作品を知る者からすると肩すかしを食らうが、
約一時間半という短い作品ながら彫り上げられた彫像は冷たく美しく、珠玉の作品。
青い犬の目―死をめぐる11の短篇 (福武文庫)
単行本刊行は1990年、文庫本第1刷は94年、短篇集。ガルシア=マルケスを知ったのは筒井康隆がラテンアメリカ文学をほめていたことからだったと記憶している。「三度目の諦め」は不思議な味わい。語り手は誰なのか、死んだ人か、第三者か、薄れゆく意識なのか。独特の閉鎖空間が味わえる。訳も日本語として違和感なく物語に入れる。マルケスを読んでいると江崎誠致著「ルソンの谷間」に収録されている「岩棚」を思い出した。こういう物語を書きたくなる人というのは国を問わず少なからずいるのだなあ、と思う。「マコンドに降る雨を見たイザベルの独白」は雨降り続きという設定をシュールに感じさせない著者のうまさがでている。
For Love Or Country: Arturo Sandoval Story [VHS] [Import]
キューバの伝説のトランペット奏者Arturo Sandoval(アルトゥーロ・サンドバル)の“自伝”。
基本的に反革命の映画。 特に80年代以降CUBAを離れていった人々の心境の変化をよく描き出していました。 <アルトゥーロの奥さん・マリア・エレーラ>を通じて我々はその気持ちを汲み取ることができます。「私が外国人を招いたり、主人が好きな音楽を演奏しただけで壊れるような革命ですか? その程度ならやめたら?」というセリフが印象に残ります。
実際のアルトゥーロ・サンドバルはCUBAでカストロ兄弟の次に高級車を乗り回して、豪奢な生活をしていたそうです。 したがって、アンディ・ガルシア演じるところの人物とはかなり違うのだということを実際にアルトゥーロを知る人物から聞きました。 それがトランペット奏者としての彼の価値を貶めるものではありませんが。 どうしても映画には脚色が付き物ですし、ドラマティックにしないと観客を呼べませんからね。 実在の人物と切り離して見なければならないけれども、非常に興味深い作品です。
Cien años de soledad (Vintage Espanol)
特に読みにくい本でもないければ、すぐに飽きてしまう本でも、とてつもなく分厚い本でもないのに、私は本書を読み終えるのに非常に時間がかかりました。だからといって決してわずらわしい、冗長な本ではありません。(ひとつ苦しんだのは冒頭に家系図があるものの、登場人物の名前ですね。覚えられない名前ではなく、同じ名前が頻繁に出てくることですね。)
で、今この本が私の中でどの地位についたのかと言えば、(よく言われるたとえですが、)無人島に3冊の本しかもっていけないとしたら、確実に本書がその一冊になります。(ちなみに他の2冊は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』、ジョン・クロウリーの『リトル・ビッグ』です)。
時間があるときにある意味腹をくくって、じっくりと本書をお読みになることをお勧めします。
速読できる方がすらすら読み進めていってしまうのは、少しお勧めできませんね。独特の文体の(それでいて読みにくいわけではない)うねる様な文章を堪能していただきたい。
いざマコンドへ!