パッヘルベルのカノン~バロック名曲集
このCDは、12曲中7曲が、イタリア合奏団の演奏になっている。同じイタリアにあるイ・ムジチと比べてみても知名度はいまひとつだが、ここの演奏がなかなかよい。
パッヘルベルのカノンは、ほかでは決して味わえないみずみずしさにあふれている。この曲はたくさんの演奏を聴いたがとうとう初めに聴いたこの演奏を越えると思うものはなかった。
有名なラ・フォリアでは美しい旋律が見ものだが、とにかくチェロが上手い。ただ、指揮者がいないためか、全体としての統一感に欠けるのが残念。
また、有名なベニスの愛他、2曲のオーボエ協奏曲のソロを吹いているシェレンベルガーは元ベルリン・フィル首席オーボエ奏者。心に響く豊かな音色、情感に溺れずこれだけ落ち着いて歌い込める奏者は滅多にいないだろう。これもこの曲のベストの演奏と思う。特にマルチェルロの協奏曲は素敵な曲なので是非全曲聴いてほしいところ。
名手ラリューのフルート、中野振一郎のチェンバロもいい味を醸し出している。F.クープランの葦の独特の雰囲気には思わずのめりこんでしまう。
選曲も素晴らしい。バロックのオムニバスならこれがイチオシ。唯一の難点はバッハの曲が入っていないことだが、バッハ名曲集と称したオムニバスはたくさん出ているわけで問題ない。
デンオン・Jクラシック・コンサート・ライヴ [DVD]
加羽沢美濃ファン必見!映像もきれいで臨場感抜群!特に夕焼け雲の音色は気持ちが高ぶって、まるでコンサート会場にいるような感覚に浸れます。高木綾子さんのフルートの音色も本当に素敵!!
チェンバロをひこう ~憧れの楽器をはじめるための名曲集~
チェンバロ奏法を扱った歴史的な原書は数多いが、高度で専門的なものが殆んどで、これから初めてチェンバロの音楽に親しんでみようという子供達や初心者にとっては敷居が高すぎる嫌いがある。今回出版された中野振一郎氏の曲集の特徴は、先ず打鍵の強弱で音量を調節するピアノとは本質的に異なるチェンバロの機能と、それに見合った手の運び方や腕を振り下ろすような動作を避け、指を鍵盤から離さずに弾く奏法などが明確にしかも易しく説明されていることだ。特にレガート奏法では鍵盤の微妙な離し方の連続でその効果が得られるのはチェンバロ奏法の秘訣のひとつだろう。ヴェルサイユ・クラヴサン楽派の音楽の本質とさえ言われる装飾音やアルペジオ、そしてピッチについても簡潔かつ実用的に解説されている。また歴史的に使われた、現在とは大分違うオールド・フィンガリングやこの楽器特有のレジスターを使って音色を切り替える為のヒントなども興味深い。
ここに収容された曲目については既に他のレビュアーの方が詳しく紹介しているが、その多くはやはりフランスものだ。美しく多彩な音色を紡ぎだすような曲種においては、何と言ってもヴェルサイユ楽派の作曲家が抜きん出ているし、彼らの作品を練習していくことで本質的なチェンバロの美的感覚を養うこともできるだろう。そうした意味では日本語で書かれた最初の画期的な入門書と言える。ただし曲目に関しては決して入門者用の易しい曲ばかりを取り上げたわけではなく、中級以上向けのピースもかなり選択されているので、既にピアノ等の鍵盤楽器をかなり弾ける人にとっても満足のいく選曲になっている。惜しむらくは楽譜に指使いの番号が記されていないことだが、これは当時の演奏習慣を考慮した結果だと考えられる。