監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)
どぎつい映画である。でも、激しく心揺さぶられる映画である。
これは、被写体と撮る側が心情を吐露し、生々しく赤裸々にそれを描写するプライベート・フィルムであり、ある男がかって愛し、今も忘れられない女性に捧げられた最高の献辞であり、ラブレターであり、惜別と鎮魂の記録。
そして、これはまた、AV女優を職として選んだ女性とその母親との確執と和解の記録でもある。
90年代初め、平野勝之は、初のAV映画監督作で、主演女優の林由美香と出逢い、後にふたりは不倫関係に陥る。
97年、ふたりは北海道までのツーリングドキュメントを撮り、それは、劇映画「由美香」として世に出る。
その後ふたりの仲は終わり、精神的ダメージを受けた平野は久しく映画が撮れなくなるが、ようやく創作活動を再開。05年に由美香との仕事を始動させようとした矢先、“不慮の出来事”に遭遇する、、、。
詳細については敢えて触れない。とにかく御自身の眼で観て、それぞれに感じて頂きたいと思う。
全編エモーショナルで心掻き乱される作品だけに、印象的なシーンも多いのだが、個人的に最も記憶に残るのは、冒頭から10分ほどに登場する何気ないカット。
今、どんな気持ち?と尋ねる平野に、カメラ(越しの平野)を陶然と見つめる由美香の潤んだ瞳と甘えた表情。
女性が好きな相手にだけ見せる惚けた態度、男なら誰でも感じるであろう愛くるしいその仕草。
映画のラストに再びそのカットがインサートされていたのを観て、彼は本当に彼女への想いが深かった事を実感する。
そして、本編で何度となく平野自身から発せられる“監督失格”との言葉。
一度目は97年のドキュメンタリー撮影時での由美香との痴話喧嘩中思わずカメラを廻す事を止めてしまった事、そして、ニ度目は、“不慮の出来事”に遭遇時、激しく動揺しカメラを離してしまった事。
かって由美香からも叱責され、表現者としての資質に欠けているとの自責と悔悟に向き合いつつ、再び、人間として、男として、表現者として、それを背負いながらも新たな道を探し求める。
その意味の深さを知り、たかが映画のタイトルに、かってここまで痛切な思いが込められていた事があっただろうか、などと思いながら、しどろもどろになりながらのその“オトシマエ”の付け方に共鳴する。
腰の激痛を堪えながら、懸命に自転車のペダルを漕ぎつつ、彼女の名前を泣きながら絶叫するその姿に胸を衝かれて涙が溢れた。
〜「こんなの撮っちゃったら次出来なぇんじゃないか?って言われるけど、くたばりません。」〜
パンフレットで、柳下毅一郎とのインタビューの最後で結んだ平野の言葉通り、是非とも次作を期待して待ちたい。
辛いけど、傑作!必見!
クイック・ジャパン86
担当編集者が大西さんから別の人になって以来、銀魂のセリフのキレやシリアスとギャグの振り幅がイマイチで大して興奮するほどには楽しめていませんでした(ちなみに大西さんが担当になったワンピースはおもしろくなった。大西さんは優秀な編集者なんだろうなと思う)。
そんな中よんだ座談会はかなりおもしろかった。空知さんは頭いい人だなあと思いました。
あがた森魚とZIPANG BOYZ號の一夜 惑星漂流60周in東京 [DVD]
赤色エレジーからいうと、40年近くになるんですかね。ずーっとあがた森魚師と共に昭和から平成へと生きてきた人間としては、感慨深いものがあります。”はちみつぱい”のメンバーやら、”ムーンライダース”のメンバーやら、過去のアルバムに参加した矢野顕子さんやら、入り乱れての懐メロ大会のようで、それぞれの時代を知っている者からすれば、涙なくしては観られません。みんな歳をとったなあ。でも、それを受け入れてこのDVDを観て僕らも頑張りましょうか!
ひとつだけ/the very best of akiko yano
優美なピアノタッチに体は弛緩して、心は躍動する。
素直で可愛くて、大人で愛がある歌詞に胸が熱くなる。
矢野顕子の音楽がなければ生きていけません僕は。
あがた森魚 ややデラックス [DVD]
あがた森魚といえば、今からン十年前にM大学学祭「ロック叛乱祭」に一人(ギター一本)で登場し、「ボク、ここの大学を中退しました」と歌う前に気弱そうに言った青年と同一人物なのですよね。この人が現在でも活躍しているわけです。なんて「強い人」なのでしょう。
この映画は、彼と同行したような気分にさせてくれる一種のロードムビーでもあります。客が多かったり少なかったり、いさかいやアクシデントがあったりツアーには大変なことがいっぱいありますが、彼に言わせれば「あっという間」の全国縦断ツアーなのですね。とてもフォーキーな映画です。
演奏曲数が多いからどうしても中途でカットしなければならないですがうまく処理していると思いました。訪問する各地方の風景も美しいです。