サンプル・キティ (1) (ソノラマコミック文庫)
夫と小さな娘と主婦(主人公)の三人暮らしの平凡な生活が、隣に双子の兄弟が越して来たときから、非日常に入り込んでいく。謎の解明と共に物語はかなり深刻になっていくのだが、主人公はどこまでも平凡であり続けようと葛藤する。登場人物の内面が、明智さんならではの人をくった人間観察眼で描かれていて、ありきたりのものとは違ういい味が出ている。物語の中で、日常の現実と非日常のSFとのギャップをうまく描いて、奇妙な面白さをかもし出している。通好みの作品と言えるかもしれない。一読の価値あり。
死神の惑星(ほし) (3) (ソノラマコミック文庫)
1,2巻で丁寧に描かれた各キャラクターの複雑な背景を経て明かされるリンの正体、
タイトル『死神の惑星』の意味が更に深まった最終巻です。
SF作品なのですが、そこここに感じられる哲学的な香りに驚きます。
人生そのものが大変貴重なものだと思えてくる。
それから全巻通して台詞が素晴らしい。
きっと機会があれば使ってみたくなります。
ちなみに…この作品に名前がでてくるシロッコとふぉんを更に見たい(知りたい)方は
明智抄の別作品『砂漠に吹く風』もオススメです。
砂漠に吹く風(1) (ソノラマコミック文庫)
明智抄の『死神の惑星』2巻の帯に書いてあったコピーは「無冠の天才」。これ以上に、明智を言い表す言葉はないだろう(編集者さんに拍手!)そして本書は明智のライフワークとも言える、壮大な物語の一部である。
マイク・スミス(ありきたりな名前)と呼ばれる優秀なクローンたちが大量生産され、活躍する近未来。端麗な容姿と明晰な頭脳を持つ彼らは人々の(商品として、または人間の理想としての)憧れの的だったが、彼らは悲劇的な病におかされていた。その病を取り除くため、サイコノベリストのジェイの助けが必要になるのだが、彼(?)もまた心の傷があって……。
人間と記憶の関係を鋭く描いた作品。しかしそれが硬く難しく見えないのは、登場人物たちの感情が丁寧に描かれており、感情移入がしやすいからだろう。SFとしての話運びは秀逸であり、連載打ち切りのために最後が尻すぼみなのは全く残念である。絵に対して少し違和感を覚える人も、ストーリーを追っていけばきっと面白いと思えるだろう。
一時は絶版になりながらも、根強いファンの復刊運動によって復活したという事実が、全てを物語っているかもしれない。(実は復刊運動を始めたのは私なのですが←ちょっと自慢)
筒井漫画涜本ふたたび
氏のちょっとしたファンで短編集もいくらかもってるが、もうちょっと漫画映えする作品あると思うけどなあ?熊の木本線、北極王などは結構良かったですが。まぁ、でも読む価値はあるとは思います。
蜜の眠り (光文社文庫)
恩田陸の「睡蓮」(「麦の海に沈む果実」からリンクしている)が
読みたくて購入したのだけど、他のがよくって得した気分。
読んだことのない作家さんのお試し版としてもいいと思います。
「ハンサムウーマン」(明智抄)の主人公の女性の気持ち、
なんとなく共通するものがあって胸にきゅっときました。
これが一番好きです。