ハナシがはずむ! 笑酔亭梅寿謎解噺 3 (笑酔亭梅寿謎解噺) (集英社文庫)
謎解き要素はあまり感じられない代わりに、落語の楽しさが伝わってくる。
師匠のドタバタに巻き込まれる竜二(主人公)の巻き込まれっぷりも板に付いている。各話とも噺の面白さが芯となっている。落語初心者にも十分知っている方にも楽しめる一冊である。
水霊 ミズチ [DVD]
本作は一応、ポニキャンやYahooが製作を担当する「ホラー大作」だ。それを若手の山本監督が背負うには相当ムリがあったのではないか?演出力は別に年齢で優劣が決まるものじゃないが、活動写真の世界ではやっぱり「下積み」が必要だ。メイキングを観ると、山本監督はモニターで演出している。スタジオ上がりの監督たちは名だたる先輩にシゴかれるので、役者の横かカメラの傍にいるものだ。それが「今の芝居もカメラもダメ」と遠隔で言われてもなあ、という感じだ。百歩譲って仕上がりが良ければいいが、正直本編は最後まで観るのが大変だった(笑)。編集している時点で監督も「こりゃ支離滅裂だな」というのが分かったのではないか。だからサイドストーリーの「水霊縁起録」が必要になった、ということだろう。意外にもこの100分の出来はいい(笑)。こちらはYahoo動画でのみ公開されたようだが、できればこの作品を観てから本編を観たほうがいいだろう。本編で「?」だったいくつかのシーンの謎は解けます。結局これは黒沢組の快作「回路」をモチーフにしているのだろうが、足元の先にも及ばない。役者陣は井川遥、渡部篤郎、星井七瀬、山崎真美、柳ユーレイら面白い組み合わせなのに、本当にもったいない出来だった。ぜひ中田秀夫監督に撮ってもらいたかったなあ・・・。本編は星1つだが、演技録に2つプラス。
こなもん屋馬子
大阪のどこかの街に現れる不思議な粉もんやと、その店主、蘇我家馬子(典型的大阪のオバチャン)を中心にした、
日常の謎ミステリーのような、ファンタジーのような、落とし噺のような不思議な連作短編集です。
ここに出てくる地名が、大阪人なら必ずなじみのある場所で、ああ、ああ、あの街には、こんな店ありそうやなあ、
という描写です。
会話もご飯の描写もうまくて、とても楽しい。
第2話には、大阪人なら知らないものはいない「あの人」を彷彿とさせるキャラクターが出てきます。
「うまいっ!」と膝を打ってください。
謎だらけの馬子ですが、この作者は「UMAハンター馬子」という本も書いているようなので、
そちらも読んでみようかなと思っています。
ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺 2 (笑酔亭梅寿謎解噺) (集英社文庫)
前作「笑酔亭梅寿謎解噺」に☆5を打ったので、読みました。
前作に比べると竜二(梅駆)が主役になっており、落語の話題を中心に持ってきており、謎解きはほんの褄になってしまっている。
ミステリーとはとても言えないが落語に興味のある人には面白い小説。
落語に興味をもたれたら、古典落語の大作を演じられる数少ない柳家さん喬師匠のCDがありますのでどうぞ!「朝日名人会」ライブシリーズ27では、作中に出てくる「ちりとてちん」が演じられています。
ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺 (笑酔亭梅寿謎解噺) (集英社文庫)
2004年に出た単行本『笑酔亭梅寿謎解噺』の解題・文庫化。
シリーズの第1作で、主人公・竜二の落語家への入門から語りはじめ、一応の成功を収めるまでの過程が描かれている。
田中啓文氏の著作の特徴は、色々な要素を詰め込んで話をつくっていく点にあると思う。本書でも、ビルドゥングス・ロマン(成長物語)を軸に、ミステリ、人情噺、落語が混ぜられている。一番の面白みは、竜二の落語家としての成長物語だろう。自分では才能に気付いていない「天才」が成功の道を歩んでいく物語は、それだけで魅力がある。さらに周囲の登場人物も癖がありながらも温かく、読んでいてホッとさせられる。
ミステリとしては、たいしたことがない。
ちょっと人情味が強すぎる点がうっとうしいが、並外れた魅力のある一冊と思う。